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軽い切り心地のテープカッター「カルカット」開発秘話

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テープカッター<カルカット>
  • テープカッター<カルカット>
  • お話を伺ったコクヨS&Tの萩原健さん、本田太一さん、増山正明さん、佐藤直子さん、高谷信也さん
  • サクっとした切れ心地
  • 切り口も真っ直ぐ
  • 従来品と比べて、カルカットはテープを本当に切っている
  • 刃先が鋭角で、急激に鈍角になっていく形状を考案
  • “Karu Cut”のロゴで、軽く・よく切れることを表現した
  • 大巻きタイプを持ったときの自然な感触は、まさに吊革を想起させる
 みなさんは、オフィスや自宅にあるテープカッター、いつから使っていますか? 「もう思い出せないくらい前から使っている」という方も多いのではないでしょうか。

 なかなか壊れない、あるいは、なくさないアイテムだから、買い換える機会も少ないと思います。でも、最近のテープカッターはとても進化しているんです。

 たとえばコクヨのテープカッター「カルカット」。テープを切るその瞬間、思わず「あっ」と声を出してしまうほど、軽い切り心地です。そのテープカッター「カルカット」の開発秘話をコクヨS&Tの増山正明さん、本田太一さん、萩原健さん、高谷信也さん、佐藤直子さんに伺いました。

◆“本当に切っている”テープカッター

--(カルカットの据え置きタイプを試して)これは切れ味軽いですね! この何とも言えないサクっとした切れ心地が病みつきになりそうです。

増山さん:刃に秘密があるんです。従来品と比べて、カルカットはテープを本当に切っています。

--えーと、カッターなんだから、切るのは当たり前ですよね?

増山さん:他社品も含めてほとんどの従来品の刃は、刃と言っていますが鋭利な刃がついているわけではありません。切るというよりは、刃先のギザギザにテープを押し当てて引き裂いていました。だからあんなに切れ味が重かったんです。カルカットの場合、刃のいずれの部分も鋭利な刃となっているので、本当に切ることができています。

--そうなんですか! 鋭利な刃はどうやって実現しているのですか?

増山さん:刃の形状の話と、その形状を実現するための加工方法の話があります。まず、刃の形状については、鋭い刃をもつカミソリやカッターを参考にして、いくつもの形状を考えました。難しかったのは、切れやすいと、人間の指も切ってしまう危険があることです。刃である以上、危険を完全には払拭できませんが、安全性にも配慮した、切れ味鋭い刃を目指しました。

◆発想の転換が、新しい加工方法へと導く

増山さん:次に加工方法ですが、おそらく文具業界では初めての「エッチング加工」で刃をつくっています。

--そのエッチング加工とは?

増山さん:化学薬品で金属を腐食させて形をつくる加工法で、半導体や電子部品など精密機器によく使用される技術です。従来のテープカッターの刃は、プレス加工で金属板を型抜いてつくられています。型で抜いているだけなので、刃先は鈍角になります。その点エッチング加工は、腐食させたくない部分をマスキングし、それ以外の部分を少しずつ腐食させることで、鋭利な刃に仕上げることができます。

--しかし、どうやって前例にないエッチング加工に辿り着けたのですか?

増山さん:そこが難しかったです。プレス加工では刃先を鋭利にすることはできませんし、包丁のように職人さんに研いでもらうわけにもいかず。そんなとき、ふと頭を過ぎったのが「バリ」のことでした。

--バリとは?

増山さん:バリは金属加工の際に出る副産物で、バリが付いたままでは手や指などが触れると傷つけてしまうので、普通は除去するなり、隠したりします。ただ考えようによっては、バリも尖った先は鋭い刃といえます。ただ、バリを刃として安定して使うにはコントロールが難しいので、バリのように金属の加工プロセスで自然に発生し、刃にうまく応用できるものはないかと、検討した結果たどり着いたのが、エッチング加工でした。エッチング加工も、侵食を進めていくと端面が鋭くなりすぎて嫌われることがある、と。刃を鋭くしたい我々にとってはピッタリな加工方法でした。

◆いけると実感できた、お客様の驚きの声

--シーズ起点の商品のように感じますが、“切る”という機能価値にこだわって、売れる見込みはあったのでしょうか?

萩原さん:テープカッターは梱包や封筒留めの作業で日々大量に使用する商品のため、アンケートでも刃の品質に対する不満は上位に来ていました。また近年、文房具がテレビやムック本などのメディアで取り上げられる機会が増え、商品に機能的な価値を求める傾向は強くなっています。テープカッター市場には、テープが直線に切れたり、カットする長さを設定できるといった、付加価値をもったテープカッターはすでにありましたが、切りやすさ自体にこだわった商品はなかったため、お客様に受け入れられるのではないかと考えました。

高谷さん:心強かったのは、展示会でのお客様の反応です。まだ商品名も決まっていない段階で参考出品しましたが、テープを切った瞬間、お客様から一様に「おお!」という驚きの声をいただけたのです。

--お客様の生の声を聞いていかがでしたか?

佐藤さん:私も説明員として、リアルな反応を実感しました。商品名も決まっていなければ、パッケージデザインはまだこれからでしたが、商品力の強さを実感でき、次第にこの商品は一つのブランドとして訴求していけると考えるようになりました。しっかりとしたロゴをつくり、今後シリーズが増え、カルカットファミリーとして商品が並んだときに、圧倒的な強さを訴求できるパッケージを目指しました。

◆吊革からヒントを得た握りやすさ

--一方、こちらのハンディタイプはどういった経緯で生まれたのですか?

高谷さん:これも展示会でのお客様の声がきっかけでした。店売り販売店の皆様から、法人需要が多い据え置きタイプだけでなく、個人使用のハンディタイプを要望する声をたくさんいただき、急遽企画を進めることになりました。

--ハンディタイプにはどんな工夫が?

本田さん:ハンディというからには、持ち運びするときの快適さにこだわりました。つまりコンパクトさと握りやすさです。握りやすいものって何だろうって必死に考えたんですよ。思いついたのが電車のつり革です。子どもから大人まで、誰もが日常的に違和感なくつかんでいるあの感覚を参考にできないかと考えました。

--今後の展開はどのように考えていますか?

増山さん:今後は刃の開発に磨きをかけていきたいです。切れやすいという評価はいただいていますが、私の中ではまだ100点ではありません。現状に満足せず、よりよく切れる刃に進化させていきたいですね。

--まさに、あくなき追求ですね。

増山:とことんユーザーベネフィットにこだわるのは、コクヨの開発のDNAかもしれません。

--ありがとうございました。

 一見、従来のテープカッターとは変わりないように見える「カルカット」。しかしその刃や形状には、深いこだわりがありました。私たちの知らないところで日々進化する文具。その細かな進化を見つけることも、文具の楽しみといえるかもしれませんね。
《inspi編集部》

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