まなび、はたらきに小さな発見
文房具・雑貨・家具のニュース情報サイト

まなび、はたらきに小さな発見
文房具・雑貨・家具のニュース情報サイト

徹底した仮説と検証…穴をあけずにとじる「ハリナックスプレス」開発秘話

ピックアップ

お話を伺ったコクヨの長谷川草さん
  • お話を伺ったコクヨの長谷川草さん
  • 針なしステープラー「ハリナックスプレス」
  • 紙をはさんでプレスするだけで、紙をとじることができる。
  • とじ部の幅はわずか1センチ。
  • とじ部の幅はわずか1センチ。
  • とじ部を本体のお尻部分やペンのキャップなどの硬いものでこすって平らにすると、パラパラと簡単に外すことができる。
  • とじ部が厚くならないので、重ねた際にかさばらない。ゼムクリップ、針ありステープラーと比較して厚みが60%ダウン。
  • ゼムクリップの場合
 2009年に発売され、大ヒットとなった針なしステープラー「ハリナックス」シリーズ。「針がいらない」というその機能に驚いたという方も多いのでは?

 しかし、「ハリナックス」はまだまだ進化を続けていました。新しいタイプの「ハリナックスプレス」は、なんと穴をあけずに紙をとじられるんです。どうしてそんなことが可能になったのか。「ハリナックスプレス」の開発秘話をコクヨ株式会社ステーショナリー事業部の長谷川草さんに伺いました。

◆穴を開けずにしっかりとじる

--これで本当にとじられているんですか? 全然目立たないですね。

 とじ部の幅はわずか1cm。穴をあけずに、少ないスペースで紙をしっかりとじることができるのが特徴です。書類を重ねたときにかさばりません。もちろん、従来からの「ハリナックスシリーズ」のコンセプトである「安心・効率・環境」はそのままです。

--しかも、しっかりとじられているのに簡単に外せるんですね。

 とじ部を、本体のお尻部分やペンのキャップなどの硬いものでこすって平らにすると、パラパラと簡単に外すことができます。とじ忘れやとじ間違いがあってもやり直しがききますし、一旦とじた書類をバラしてコピー機のソートにセットしても紙詰まりを起こしません。

--開発のきっかけを教えてください。

 実は、ハリナックスの開発当初から、「穴をあけずにとじる」タイプをつくることは視野に入れていました。5年前にハリナックスが発売され、金属針を使用しないことが環境に優しいだけでなく、食品を扱う業界や、高齢者施設など安全面を重視した現場からも評価をいただき、大ヒット商品となりました。しかし、ユーザーヒアリングの結果、針を使わないことに興味はあるけれども、書類に穴が開くことに不満を持っている人が結構多くいたんです。それで、本格的に開発しようということになりました。

--穴を開けずにとじる方法を考えたのはコクヨが初めてですか?

 1900年代初めにアメリカではすでに、圧力をかけて紙をとじる方法が考えられていました。その後、1930年代に欧米で製品化されていたようですが、サイズが大きく、値段も高く、文具というよりは機械のようなものでした。コンパクトであり、片手で握ってしっかりとじることができ、誰もが手に入れることができる、“文具”としてのプレスタイプのとじ具はコクヨが初めてだと思います。100年間、実現できなかった技術を実現するために、過去のパテントやあらゆる製品を研究し尽くしました。使いやすさとコンパクトさを両立させた“文具”としての機能を成立させることに大変苦労しました。

◆徹底的に仮説を立てて向き合った3年

--やっぱりサイズを小さくすることは難しかったのですか?

 もちろんコンパクトなものをつくることが最終目標でした。しかし、開発当初はサイズにこだわっていませんでした。

--そうなのですか?

 まずはサイズより、大きな出力を発揮する機構を考えることが重要でした。初めから爪切りのような小さなもので、紙を留めるのに必要な圧力が出ないことはわかっていましたから。

 僕が担当した本体機構の開発においては、まずは、機構の比率と全体のバランスを検討し、文具として現実的な構成でハンドルを握ったときに、紙を圧着するために必要な圧力が出る構造を探ることに一番注力しました。テコ比の組合せで、ハンドルを握ったときの力が紙を圧着する大きな力に変わるのですが、紙を挟んで圧着する部分にかかる力は、最低でもハンドルを握ったときの20倍の力が必要と仮定しました。つまり、手の力×20倍。初めは、女性の握力を想定し、5kgfの力を加えて100kgfの出力を目指しました。

 しかし、シミュレーションや試作での実験ではそう簡単にいきませんでした。並行して、とじ部である歯の研究を進めていくうちに、最終的に紙を圧着するには200kgf程度の力が必要だということがわかり、ハードルがさらに高くなりました。

--どうやって200kgfの出力を実現したのですか?

 参考のために色々と探しましたが、20倍の倍力構造を持つものはそう多く発見できませんでした。ましてやコンパクトな文具で体験することなんてありません。未知の世界でした。リンクの構成やテコ比の比率などさまざまな組合せを検討しましたが、なかなか必要な出力を得ることができませんでした。スタートラインに戻り、発想を変えて何度も繰り返しトライしました。

 そんな中、コンパクトさの追及も並行して検討していた試作に、手ごたえを感じました。出力を計測してみると、予想以上の出力が出たんです。もう一度確認しようと繰り返し試験しましたが、なぜかそれほどの出力は出ませんでした。初めは計測機の異常かと思いました。後から判明したことですが、実は1回のテストで本体が壊れてしまっていたため、出力が出なくなっていたのです。しかし、これが大きな突破口となり「できるかもしれない!」という自信が生まれました。
《inspi編集部》

関連 ニュース

ピックアップ アクセスランキング

  1. 1人の主婦がはじめた、キャンセル待ちが出るほど人気の「計算大会」の秘密・後編

    1人の主婦がはじめた、キャンセル待ちが出るほど人気の「計算大会」の秘密・後編

  2. 1人の主婦がはじめた、キャンセル待ちが出るほど人気の「計算大会」の秘密・前編

    1人の主婦がはじめた、キャンセル待ちが出るほど人気の「計算大会」の秘密・前編

  3. 中高生が200万回以上見た! “神ノート”作者のみいこさんインタビュー

    中高生が200万回以上見た! “神ノート”作者のみいこさんインタビュー

  4. ドーナツシールスタンプで、簡単!かわいい!ワンランクアップの手作りラッピング♪

アクセスランキングをもっと見る

特集