これを記念して、今回は「ドットライナー」の誕生秘話をご紹介させていただきます。
◆のりの歴史
“のり”と言うと何を思い浮かべますか?
多くの方が、口紅の形状をしたスティックのりを思い浮かべるかもしれませんね。そもそも“のり”の始まりは5000年も前らしく、当時は獣や魚からとれる「にかわ」が“のり”として使われていたようです。
平安時代から、米飯を練った“続飯(そくい)”が広く使われるようになり、江戸時代になると“でんぷんのり”が普及してきたそうです。子供のころにご飯粒を潰してのり付けした記憶がある方も多いのではないでしょうか?
近年になって、1895年に国内初、防腐剤入りのりの登場で腐りやすかった“でんぷんのり”の欠点が改善され、更に1919年に国産初の“液体のり”が開発されました。液体のりが普及した背景には、関東大震災による物資不足から裏面にのりの塗られていない切手が発行されたことがあったそうです。その後、1969年に口紅から着想された“スティックのり”の登場によって劇的にのりの使い勝手が進化しました。
そして、1980年代にテープのりが登場しました。ドイツのペリカン社が発売した、修正テープとテープのりの両方のカートリッジが使用できる「ロールフィックス」という商品が世界で最初のテープのりであると言われています。国内では、2000年頃から本格的に普及し始めますが、そのきっかけとなった商品が、2005年に販売を開始した「ドットライナー」なのです。
◆「ドットのり」はこうして生まれた
ドットライナーが発売される前のテープのりは、修正テープのようにのりがテープ状に繋がっていたため、塗りムラが起きたり、のりがスムーズに切れなかったり、のりの引きが悪かったり、お客様が満足できるレベルではありませんでした。
ドットライナーは、テープのりの塗りムラをなくし、のりの切れと引きを良くするために3年の歳月をかけて試行錯誤を繰り返し、日本初のドットパターンのテープのりとして誕生しました。
ドットパターンを思い立ったきっかけは、当時販売していたアルバム台紙への「のり印刷」の技術でした。のりを修正テープのように全面に塗るのではなく、アルバム台紙のようにストライプやドット状に塗ることはできないだろうか? それが実現できれば、のりの切れや引き、塗りムラといったお客様の不満を全て解消できるのではないか?
そこから様々なパターンの試作づくりが始まりました。実は、ストライプやドット状のパターンの試作品を作ってみると、のりの切れや引きに対する改善の目途は比較的スムーズに得ることができました。

様々なパターンを試しました。
しかし、致命的な問題が発覚したのです。それは、のりの基本機能である「粘着力」が低いことでした。その原因は、ドットパターンでのり付けするために、全面がテープ状のテープのりに比べてのりの量が少なく粘着力が不足していたのでした。
粘着力は、のりの材質のみではなく、のりの体積にも影響を受けます。試作品のドットパターンのりでは、仮止めレベルの粘着力しか確保できず、封筒の封緘で使えるようなものではありませんでした。
ドットパターンのままで粘着力を向上するには、従来のテープのりよりものりの厚みをアップさせる必要がありました。しかし、単純にのりの厚みをアップするだけでは、のりを塗布したときに、のりが広がってしまいドットパターンの状態が維持できなかったのです。
のりの厚みとドットパターンの両立、そして量産を実現することが大きな課題として立ちはだかりました。この課題を解決して実質的な粘着力を獲得にするため、のり自体からのりの塗工設備まで全てゼロから開発する挑戦が始まったのでした。

ひとつひとつのドットの厚さをアップ。
外部の有識者にも協力をもらい、目標とする性能の評価指標を定め、続いて分子レベルでドットライナー専用のりの開発に取り組みました。 200種類を超える試作のりで試行錯誤を繰り返し、3年の歳月をかけて、ようやくお客様にご満足いただくことができる粘着力のドットライナー専用のりが完成したのです。
新開発のパターン塗工技術を用いて、のりを「ドット(=点)」で紙に塗布させることによって、のりの切れを良くし、手軽にきれいにのり付けすることを可能にした「ドットライナー」は、ビジネスからご家庭までお客様の使用シーンに合わせて絶えず進化を続け、2017年12月現在、全ラインアップは11アイテム51品番になっています。

毎月締め切りに追われ、思い通りの記事がお届けできていない気分に苛まれている崖っぷち編集員です。でも、読者の皆さんに少しでも楽しんでいただける記事を書こうという想いだけは負けていませんので、長い目でみてやってください。ちなみに、ペンネームは、愛犬(コーギーちゃん)の名前です。