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無くなってからわかる大切さ…ゼムクリップは空気と同じぐらい重要な文具かもしれない

文房具

つながったゼムクリップ。
  • つながったゼムクリップ。
  • マグネットボックス ゼムクリップ(小)50g(約208本)入(青)
 あまりに多くあり過ぎて、その存在をわざわざ気に留めない物がある。たとえば空気。逐一「自分は今、空気を吸っている」と意識しながら呼吸する人は、そういないだろう。

 そんな空気と同じぐらい、我々の身の回りに大量に存在している文具がある。

 ゼムクリップだ。

 針金を楕円型に曲げた、紙を纏める時に使う道具――などとわざわざ説明する必要もないだろう。少なくとも、この文章を読んでいる人なら一度は触ったことがある筈だ。

 ゼムクリップの意外と長い歴史や「ゼム」の意味云々に関する基礎知識についてはWikipediaに任せるとして、ここではゼムクリップに光を当てた小説を紹介したい。長嶋有『ぼくは落ち着きがない』(光文社文庫)には、ゼムクリップがわざわざ登場する。

 この作品は、とある高校を舞台に、図書室で活動する「図書部」の部員たちの日常を描いた青春小説だ。物語は大部分が図書室の中で進行し、ひたすら学校生活の中で起きたちょっとした(しかし当人たちにとっては大きな)事件が積み重ねられていく。

 図書部の活動は、本の貸出をはじめとした図書室の運用業務だという。受付で貸出カードを受け取って仕切の入った箱に並べたり、読書週間の特集を企画したりする。そういうことは図書委員の仕事ではないかと思うのだが、この学校にはちゃんと図書委員会も別で存在する。受付には、図書部員と図書委員が二人一組で座ることになる。その貸出業務の時に、ゼムクリップは登場する。利用者カードと貸出カードを纏めるために使われるのだ。

 別に特筆すべきことでもないように思われるかもしれない。だが、「ゼムクリップ」という単語が文中に出てくる小説はちょっと珍しい。なにか特別な存在感を持っているように感じられる。小説では、そこにあって当たり前の物は、わざわざ言葉にして書かれたりしないからだ。

 そんな、普通なら「ある」だけで描かれることも少ないゼムクリップが、物事のきっかけを作る場面がある。受付業務でクリップを取ろうとしたら、全部つながっていた――というイタズラの道具にされるのだ。しょうもない使われ方だが、図書部にとってはちょっとした事件となる(犯人と目された男子生徒は追い回される)。

 もう一つ、今度は「ない」ことによって脚光を浴びる場面がある。正確には、「あと少しでなくなりそう」な状態だ。

 物語の終盤に位置するこの場面では、ゼムクリップはまさに空気と同じような役割を持って描かれている。息苦しさを覚えた時に空気が薄くなっていると気付くように、なくなりかけていると言われて初めて、主人公はクリップが少なくなっていることに気が付く。実はこの時、主人公たちは重大な変化に直面しているのだが、そんな状況も相まって、あると思っていたクリップが少なくなっていることは別の意味も帯びてくる。

「たくさんある」物が「いつまでもある」とは限らない。というか、大抵の物はいつか無くなってしまう。あって当たり前と思っている物の残量には、時々でも気を配るべきなのかもしれない。ゼムクリップに限った話ではなく。

東十条王子
鉛筆シャープの書き心地に夢中です。落書きばかりしています。文房具に関する知識はまだまだなので、勉強していきたいと思います。ちなみに名前は駅名です。どこかの王族ではありません。

《東十条王子》

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