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今が理想の未来じゃなくても… 夢を現実にするため小説家は付箋を書き続ける

文房具
ホワイトボードに付箋。
  • ホワイトボードに付箋。
  • 付箋。
「夢見た未来とちがう今を生きる、元家族の物語」というキャッチコピーのついた映画がある。先頃、「万引き家族」でカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞した是枝裕和氏による2016年の監督作「海よりもまだ深く」だ。

 15年前に文学賞を受賞したきり、鳴かず飛ばずの売れない小説家が主人公のこの作品。主人公の良多は取材のためと称して身を置く興信所の仕事でズルをしたり、ギャンブルに溺れたり、別れた妻に渡す養育費を工面出来なかったりと、どう好意的に見てもパッとしない人生を送っている。

 そんな彼の心の支えは、妻が親権を持つ一人息子の存在だ。良多は月に一度の息子と過ごす面会日を心待ちにし、その日が来ると目いっぱい父親として振る舞おうとする。既に消えて無くなってしまった家庭を、必死で取り戻そうとするかのように。

 劇中、これでもかというぐらい「夢見た未来とちがう今」が示される。それは人物の言動であったり、周囲の環境だったりと、様々な形をとっている。そんな逆流だらけの状況に抵抗する良多の心が、ある文房具の形を借りて描かれる。

 付箋である。

 良多は日常生活で思い付いたアイデアを手帳に書き留めている。そして、毎晩自室の机に向かってはそれを付箋に書き写して目の前の壁に貼っていく。

 壁には既に大量の付箋が貼られており、良多が長きに渡って同じ作業を続けてきたことを覗わせる。15年間結果を出せていないながらも、彼は小説家であることを諦めていないのだ。

 だが、付箋の多さはそのまま「夢見た未来」と「今」の距離を表しているようにも見える。

 出版社から漫画原作の仕事を持ちかけられるも、良多はこれを断ってしまう。良い収入源となる筈なのだが、「純文学作家」というプライドが小説以外の仕事をするのを許さないのだ。

 彼は編集者に「今書いている作品の仕上げがある」と言い訳をするが、この作品が完成したのか、そしてちゃんと世に出すことが出来たのかは、劇中では描かれない。なんとなくだが、上手くいっていないようにも見受けられる。壁に貼られた付箋は、単なる「小説家として活動しているポーズ」なのかもしれない。

 しかし、たとえ見せかけだとしても、いや、だからこそ、「夢見た未来とちがう今」に立ち向かう良多の必死さが伝わってくる。

 映画は、歩いていく良多の後ろ姿で幕を閉じる。その後の彼が壁の付箋を剥がしたか、或いは増やし続けるかは定かではない。これは実際に本編を観て判断していただきたい。観る人の「今」によって予想される未来は変わる筈だ。

東十条王子
鉛筆シャープの書き心地に夢中です。落書きばかりしています。文房具に関する知識はまだまだなので、勉強していきたいと思います。ちなみに名前は駅名です。どこかの王族ではありません。

《東十条王子》

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