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【イベント裏話】先鋭デザイナーたちに聞く「コクヨメッセ2018」にこめた想い

文房具

右からスペースソリューション事業本部・クリエイティブデザイン部部長の佐藤航さん、デザイナーの花田陽一さん、デザイナーの須賀真紀子さん
  • 右からスペースソリューション事業本部・クリエイティブデザイン部部長の佐藤航さん、デザイナーの花田陽一さん、デザイナーの須賀真紀子さん
  • 「コクヨメッセ2018」の空間デザインを担当したスペースソリューション事業本部・クリエイティブデザイン部の佐藤航さん、花田陽一さん、須賀真紀子さん
  • 「コクヨメッセ2018」のテーマは「Live」
  • 「女子文具」ゾーンには、女性の鞄の中身、着回しコーデをイメージしたインスタレーションが。
  • 「学び」ゾーンのインスタレーションには、現役の中高生たちとのワークショップで制作されたキャンパスノートの表紙が使用されている
  • 現役の中高生たちのリアルが伝わる「学び」ゾーンのインスタレーション
  • 各インスタレーションレーンには、それぞれのコンセプトを象徴する効果音が流れている。
  • スペースソリューション事業本部・クリエイティブデザイン部  部長の佐藤航さん
 2018年7月5日から9日まで、コクヨ東京ショールームで開催された「コクヨメッセ2018」。

 「LIVE」をテーマとした展示会場に一歩足を踏み入れると、昨年までとは何かが違う!会場全体がまるでアート作品のような空間にデザインされています。空間が細長いレーン状に仕切られ、その間を縫うように歩いていくと展示会場をぐるっと一周できるという仕組み。仕切りに使われているのは「コクヨキャンパスノート」の表紙が印刷された、裁断前の厚紙。展示台には工場や倉庫でよく見られる木製のパレットが用いられています。会場内は6つのコンセプトに分けられ、それぞれのコンセプトゾーンは、グラフィックデザインが施されたロール紙がアート作品のようにディスプレイされたレーンと、商品展示レーンの2レーンで構成されています。

 この空間には、どのような想いが込められているのでしょうか。空間デザインを担当した、スペースソリューション事業本部・クリエイティブデザイン部 部長の佐藤航さん、デザイナーの花田陽一さん、同じくデザイナーの須賀真紀子さんに伺いました。

◆商品のコンセプトを五感で感じる空間を

--今回のコクヨメッセは、従来とは会場の雰囲気が随分違う印象ですね。これにはどのような意図があるのでしょうか。

佐藤:全体テーマの「LIVE」から発想して、まずブレインストーミングを行いました。その結果、工房、劇場、テーマパークのような来場者参加型のスペースなど、さまざまなアイデアが出ました。ディスカッションの末「もの作りの現場を実際に体感してもらう」という方向性に落ち着きました。工場を裏テーマにして、私が全体のディレクションを行い、花田が会場全体の構成を考えました。須賀は、各コンセプトゾーンのインスタレーションを中心にデザインを行いました。

花田:細長いレーン状に空間を仕切ったのは、工場のラインのイメージです。間仕切りに使った、裁断前のコクヨキャンパスノートの表紙は、工場の半製品を表しています。展示台には、工場で使われる木製パレットを使用し、雰囲気の演出をしています。

スペースソリューション事業本部・クリエイティブデザイン部デザイナーの花田陽一さん
会場全体の空間構成を担当したデザイナーの花田陽一さん


--なるほど。すべての要素が工場での工程を想起させますね。レーンごとに、大きなロール紙の装飾がありますが、どのような意味が込められているのでしょうか。

須賀:私たちは、あのレーンを、展示空間そのものをアート作品ととらえた「インスタレーション」と呼んでいます。ただ漠然と商品を展示するのではなく、これから見せる商品のコンセプトをアーティスティックに表現することで、よりライブ感やコンセプトへの没入感が得られるような空間にしたいと考えました。

佐藤:たとえば「学び」ゾーンには、現役の中高生たちとワークショップをして、彼ら彼女らに今の想いをノートに描いてもらったものを、そのままディスプレイとして使いました。インスタレーションレーンを歩くと、手書きの文字や落書きから、商品を実際に使っている中高生のリアルを感じられるはずです。

須賀:「女子文具」ゾーンのインスタレーションでは、「鞄の中身」「着回しコーデ」「ワードローブ」といった、ファッション雑誌で女性に人気のあるテーマをグラフィックで表現しました。こういう導入を経て、展示商品を見て説明を聞くことで、そのコンセプトやこう使ってほしいという想いが伝わりやすくなるのではないかと思います。

スペースソリューション事業本部・クリエイティブデザイン部デザイナーの須賀真紀子さん
各コンセプトのインスタレーションをデザインしたデザイナーの須賀真紀子さん


◆ユーザーが「考える余地があるデザイン」の面白さ

--その他のゾーンでは、どのようなことをインスタレーションで表しているのですか?

佐藤:「ソフトリングノート」ゾーンでは、客室乗務員、薬剤師、サラリーマンといったさまざまな職業の人のそれぞれのソフトリングノートの使い方を紹介しています。「家庭」ゾーンでは、「KaTaSu(カタス)シリーズ」などのオフィス用の収納用品が家庭でも使われている例を紹介しています。同じ商品でも、立場や職業によって、全く違う使われ方をします。活用方法をユーザーに委ねる余地があるということに面白みがあると感じています。

--カチカチ、ざくっざくっ…。会場に流れる音も気になっているのですが、これもインスタレーションの一貫ですか?

須賀:今回のコクヨメッセは「LIVE」がテーマなので、五感に訴える展示にしようと当初から決めていました。そのなかで、音を使おうという方向性は早くから提案していました。たとえばハサミで紙を切る「さくっ、さくっ」という音やそれが想起させる切れ味が文房具の魅力だったり、ノック式ペンをカチカチ鳴らす音を聞くと誰でも授業中の風景を思い出したり、音で伝えられることって意外と多いんですよね。今までのメッセでは、展示の中で効果音を使うことはなく、ありそうでなかった五感に訴える展示が今回の特徴です。

--確かに。音によって、その文房具を使っているシーンが自然とイメージできますね。でも、来場者の中には、つい商品ばかりに注目してしまって、インスタレーションをすべて感じとれない人もいるかもしれません。

佐藤:私たちが10伝えようとして、来場者に10すべてが伝わるとは思っていなくて、3つとか4つでも伝わればいいと思っています。発信側が伝えたいことを100%押し付けるのではなく、受け取る側が考える余地があるデザインが面白いのかなと。先ほどの商品自体のデザインと同じですね。

スペースソリューション事業本部・クリエイティブデザイン部 部長の佐藤航さん
全体ディレクション担当のスペースソリューション事業本部・クリエイティブデザイン部 部長の佐藤航さん


◆文房具×空間デザインが生んだ「遊び」のある空間

--今回のデザインのアイデアはどのように生まれたのですか?

花田:気づいたら出ていた、という感じでよく覚えていないですね。僕一人で考えたというより、プロジェクトチームのメンバーでわいわい話し合っている中から出てきたアイデアが自然と形になったような気がします。

佐藤:今回のコクヨメッセは、空間デザインチームの私たち3人と、ステーショナリー事業本部の広報メンバーという、普段あまり接点のないグループがコラボレーションをして空間作りを行いました。異なる分野のメンバーが協力し合ったことで、新しい、面白い切り口のアイデアが出てきたのではないか感じています。たとえば、キャンパスノートの表紙を間仕切りに使うという発想は、文房具チームなしでは生まれてこなかったものです。

--空間デザインをするうえで、常に意識していることはありますか?

花田:「空気感」を大切にするようにしています。自分が作る空間は、自然にふるまえる空間・自然体でいられる空間か、心地いい空間かということはよく考えますね。あとは、過去に誰かがやっていないかを必ず確認します。まだ誰もやっていないこと、常に新しいものを作り出したいです。

須賀:完璧に整ったデザインよりも、見た人が、くすっと笑えるような遊びのあるデザインができればいいなと思っています。今回の展示でいえば「音」がそれにあたりますね。来場者の方々が気づいて、「あれ?何だろう?いつもと何か違うな」と感じてくれたら嬉しいです。

佐藤:今回のコクヨメッセでは「工場」という裏テーマで、もの作りのストーリーを展開しましたが、それと同じように空間にはストーリーが大事だと思っています。しかし、デザイナーが全部完成させすぎてもいけない。ある程度ルーズな部分というか、余白を持たせたほうが面白い。ユーザーが、こちらが想像もしないような使い方、反応をしてくれたら嬉しいですね。

右からスペースソリューション事業本部・クリエイティブデザイン部部長の佐藤航さん、デザイナーの花田陽一さん、デザイナーの須賀真紀子さん
「コクヨの空間デザイン」を牽引するスペースソリューション事業本部・クリエイティブデザイン部の皆さん


◆異なる人と人で、空間デザインの未来をひらく

--コクヨだからこそできる空間デザインには、どのような特徴があると考えますか。

佐藤:われわれ空間デザインチームは、設計事務所でありながら、ファニチャーや文房具というプロダクトも手掛けています。空間からモノまで一貫してデザインできるというのは、一般的な設計事務所とは決定的に異なる、私たちの最大の特徴であり強みだと思います。

--今後目指していきたい「コクヨの空間デザイン」とは何でしょうか。

佐藤:異分野の人どうしが、それぞれに持っている知識やスキルを出し合うと、すごく面白いものができることを今回あらためて実感しました。コクヨという会社の長い歴史のなかで、空間・文具・家具といった異分野がコラボレーションをする例はそれほど多くはありませんでした。ということは、まだまだ面白いものができる余地があるということです。これからも異分野を掛け合わせながら、未知の領域をデザインしていきたいと思います。

花田:以前はクライアントの要望を聞いて、こちらからデザインを提案するという仕事の進め方でしたが、最近は、クライアントのニーズも複雑化していて明確な答えがなかなか見えないことが多く、クライアントといっしょに考え、答えを導き出そうとする動きが増えてきました。異分野の人との協業がここにも起こっています。こういった協業の中で意外な答えが引き出されていくことに面白さを感じます。

須賀:クライアントといっしょに悩むことができるデザイナーでありたいと思います。目に見えるプロダクトだけでなく、コンセプトやコンテンツ作りの部分から参加して、寄り添いながらデザインしていきたいと考えています。「これって、実はコクヨが作っていたんだ」と思ってくれるようなものをたくさんデザインしていけたらいいなと思いますね。

--皆さんのもの作りへの熱い想いが伝わり、「コクヨメッセ2018」の奥深さを感じることができました。来年も期待しています!ありがとうございました。
《石井栄子》

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