この世に存在する人工物は、全て人間の意志によって作られたものである。線一本、角度ひとつをとっても、「こうしよう」と図面を引いた人がいるのだ。その人は、ただなんとなく設計したのではない。実現したい機能と力学上、製造上の制約、見た目の美しさのバランスを考えに考え、コレがベストだ!と思われるカタチに絞り込んでいくのである。
今回はハサミを例に取ったが、ハンドルや刃のカタチには「モノを切る」という目的のもと、さまざまな工夫が施されていた。私に「謎の模様?」と思われていた部分にも、手がけた製品を少しでもカッコよく見えるようにしてやりたい、という開発者の思いが込められていることがわかった。
あたりまえのことだが、全てのカタチには意味があるのだ。ならば、目の前にある文房具をひとつ手にとって、キミのカタチにはどんな意志が込められているんだい?とあらためて想像を巡らせてみるのも楽しい。すぐに答え合わせはできないかもしれないが、それはまたいつかのために、と密かにあたためておくのも一興である。

1983年生まれ、神奈川県出身。会社員として働くかたわら、イラスト制作を手がける。日常の「あっ」という瞬間をイラストと文章で切り取るブログ「コロメガネ」を運営。また、文房具マニアとしてワークショップ、イベントでも活動中。