文房具店の探訪、あるいは堪能~文具自分紀行・その4
日頃から「あーでもないこーでもない」と考えている紆余曲折をあえて公開することで、文房具について思考をめぐらせ悩む楽しさを半ば強制的に共有しようというこのコラム。第4回は、文房具店の楽しみ方、味わい方について考えてみたい。
文房具
◆文具好きは、用がなくても店に行く
私は、おしなべて週に1回は文房具店に行っている。多いときは2~3回行くし、ハシゴもする。なんて話をすると、「そんなに買うものがあるんですか?」と聞かれたりするが、それは違う。買うものがなくても行くのだ。なぜなら、行くことがすでに目的であり、楽しいから。本好きが用もないのに本屋に行くように、服好きがお気に入りのショップの近くを通ったら必ず立ち寄るように、文具好きは文房具店に行くのだ。
「とはいえ、そうしょっちゅう行っていたら飽きませんか?」という人もいる。だが恐ろしいことに、まったく飽きないのだ、これが。お店はひとつひとつみんな違うし、同じお店でも別の日に行くと新たな発見がある。そこで今回は、僭越ながら私が文房具店を訪れる際の「味わいポイント」をつらつらと列挙してみようと思うのだ。
◆入店前に…まず外観を味わおう
文房具店についたら、一刻も早く入りたい!とはやる気持ちをおさえて、まずは外観をチェックする。看板やショーウィンドウは、まさにお店の「顔」である。道行く人に「私はこんなお店ですよ」とアピールしてくれているのだから。
個人経営のセレクトショップなら、看板にも店主のセンスや世界観がにじみ出ていることだろう。店の名前だけを事務的に記した看板も、「うちは実用重視の質実剛健なお店だから」と言っているようで、スカッとした潔さがあり、心地いい。
事務用品が中心の店の場合は、店名の他に文具メーカーのロゴの看板が掲げられていることもある。これはその店で取り扱いのあるメーカーを示すものだが、ここではロゴの新旧が注目ポイントだ。例えば「KOKUYO」であれば、カクカクしたデザインが懐かしい旧ロゴの看板を今もよく見かけるが、それを掲げているお店は少なくとも新ロゴが発表された2005年よりも以前から、長く変わらぬ商売を続けている、ということになる。新ロゴの看板はそれ自体がめずらしいので見つけると「おお!」となるし、「ここの社長は新しいもの好きでバンバン採り入れるタイプなのかな?」と勝手に想像するのも楽しい。
ショーウィンドウがある場合は、その中身もしっかり見ておきたい。季節ものの商品やイチオシのアイテムが並んでいることもあるし、従業員によるものなのか、手作りのオブジェや飾り付けを堪能できることもある。そうそう、店先にお買い得品のワゴンがあれば、これも要チェック。思いがけない掘り出しものに出会える場合もあるからだ。