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【我喜愛的文具店(私の好きな文具店)香港編8】食事もドリンクも文具も道具

 2014年に登場した、香港におそらく1件だけの文具カフェ。変化の早い香港の街の中で、変化を求め続ける香港の人々が通り過ぎても、シンプルで変わらない存在であり続けようとする街角のお店を、今回はご紹介します。

文房具
文具に囲まれて、のんびりとドリンクや食事を楽しめるお店TOOLSS。
  • 文具に囲まれて、のんびりとドリンクや食事を楽しめるお店TOOLSS。
  • 石●尾の地元の人しか行かない路地の角に、TOOLSSがあります。
  • カウンターに座ってのんびり読書や作業をできる貴重なお店
  • 軒先の椅子に座っておしゃべりを楽しむ人もいます
  • キッチンが見える素敵な窓
  • 道具屋さんを挟んで、2軒隣にもキッチンがあります。
  • 店主のPunさん。4年前に独立し、大好きなコーヒー・食事・文具の店を作りました。
  • 学生時代に久留米に短期留学していたというPunさん。とてもきれいな字で色々な地名を書きながら、楽しそうにその時の思い出を語ってくれました。
 2014年に登場した、香港におそらく1件だけの文具カフェ。話題になっていたのになかなか行けず、私が初めてお邪魔したのは今年の夏。たった4年、されど4年。とても素敵な空間の中には、4年間という時間の重みがしっかりと刻み込まれています。変化の早い香港の街の中で、変化を求め続ける香港の人々が通り過ぎても、シンプルで変わらない存在であり続けようとする街角のお店を、今回はご紹介します。

穴場にあった文具カフェ「TOOLSS」


 九龍の繁華街からすぐ近くですが、意外と行く用事のない石硤尾(Shek Kip Mei)。文具カフェTOOLSSはこの古い町の小さな路地の角にあります。路地に面したカウンターや、店の外に置かれたイスが特徴的で、ここに座って話したり、本を読んでいる人たちの姿が、とてものんびりした雰囲気を作っています。
石硤尾の地元の人しか行かない路地の角に、TOOLSSがあります。
 こんな穴場を見つけてお店を開店されたのは、私の予想通り地元で生まれ育ったというPunさん。ご実家の引っ越しにより、しばらくこの地を離れていたPunさんですが、独立してお店を始めようと考えた時に思いついたのはこの場所でした。

 その理由は、古い下町で、家賃が安いこと。近所の人たちがとてもフレンドリーで、色々手助けや、商売についてのアドバイスをしてくれるため、この場所を選んだことは正解だったとPunさんは言います。路地の中でも最高の立地であるこの角地、以前は不動産屋さんだったそうです。その昔、Punさんが子供の頃は薬局だったとのこと。地元の人しか足を運ばないような場所ですが、ラッキーなことに近くには国際デザイン学校もあり、地元民だけではなく外国人の学生など様々な種類のお客様が来られるそうです。

 Punさんが文具を好きになったのは働き出してから。子供の頃は、自分が商売をするとも、文具の仕事をするとも想像していなかったそうです。前職で週刊誌の記者・編集者をしていた時に、Punさんにとって文具は欠かせない仕事道具となりました。その間に50冊以上のノートと、数え切れないペンを使い、文具屋に行くこともしょっちゅう。そうする中で、ペンがさらさら走るノートもあれば、引っかかるノートもある、など、一口にノートと言っても、色々種類があることに気づきます。
店主のPunさん。4年前に独立し、大好きなコーヒー・食事・文具の店を作りました。
 様々な文具の違い、その背景に興味を持ったPunさんは、地元の文具屋さんに行っては店員さんと話し、1時間以上も滞在することも度々あったそうです。こうしたことから、週刊誌の仕事をやめ、何の仕事をしようかと考えた時に、自分の好きなものはコーヒー、グルメ、文具、ということで全てを組み合わせたお店をしようということになったのです。

「TOOLSS」という名前に込められた想い


「TOOLSSという名前の由来は、隣の道具屋さん(工具屋さん)に関係ありますよね?」という確信を持って尋ねた私の質問は、ハズレでした。隣がご両親のお店で、そこの一角をリニューアルし作った店だからTOOL、というわけではなく、まず隣の道具屋さんは関係のないお店。店名にはもっと深い意味が込められていました。
道具屋さんを挟んで、2軒隣にもキッチンがあります。
 Punさん曰く、TOOLというのはコーヒーであり、文具であり、カバンであり、食べ物。すべては私たちが何かをするためのTOOL。そして、SSは、SimpleとStandardという意味でした。人々の日常生活の中の基本的なTOOLを提供し、でも必要以上のことはしない。ラテアートや派手なフード、高級文具を売るのではなく、シンプルで本当に良い物を、シンプルな空間でお客さんに楽しんでほしい、という想いを込めたお店だったのです。

 私がこのお店のことを知ったのは、たしか雑誌の記事だったと思います。オープン当初、香港で初めての文具カフェということで、様々なメディアに「コンセプトショップ」として取り上げられ、NHKの番組にも登場したのだとか。しかし、それから数年で多くの人々は興味を示さなくなり、来なくなってしまったそうです。

香港の人は文房具が好き?


 Punさんが身をもって感じたのは、香港の人たちは一般的に流行に敏感だが、本当に文具を好きなわけではないということ。食事もドリンクも文具もすべてセット。内装も音楽もすべて含めたこの空間を楽しみ、一つでもよいから自分がこだわって集めた文具も買ってほしい、というPunさんの想いに共感し、通い続けてくれるお客様はほんの一握りでした。
本や絵など、お客様がついつい長居してしまう誘惑がたくさん
 しかしPunさんは、その原因の一端がご自身にもあると考えています。実はTOOLSSはその後勢いに乗って2店舗目を別の場所に開店しましたが、このお店はつい最近閉店していました。そしてこの2店舗目のオープンから閉店までが、彼にとっては大きな転換期となりました。

 それまで毎年2か月に1回は海外に行き、旅行や趣味のキャンプとともに、文具の買い付けをしていたPunさんは、2店舗の運営で忙しくなり、なかなか自身で買い付けをすることができなくなったのです。友人に時々仕入を手伝ってもらっていたものの、新しい文具の入荷が少なくなり、お客様にとっての楽しみが減ってしまったのではないかというのがPunさんの考えです。

 2店舗目の閉店を終えたPunさんは、これからはこの店で、もっと文具を充実させていきたいと言います。開店当時から一度も忘れずに続けてきた、お客にとって居心地の良い空間づくりに変わらずこだわっていきたいと言います。どんなにお客が長居をしても、どんなに混雑していても、お客様に帰ることを促したり、席の移動をお願いしたことはこの4年間で一度もないというのが、Punさんの誇り。何とかもっとお客のための空間を広くとるために極限まで店員のスペースを狭めたり、外にイスを置いたりと、日々工夫を凝らしています。
店の中を眺めると、壁も天井も色々楽しいグッズで埋まっています。
「香港内の色んな所にこういう店が増えてほしい」「今後文具カフェができても敵だとは思わないし、協力もしたい」「石硤尾にはTOOLSSがあり、どこどこには他の〇〇があり、というように、みんなで盛り上げて、文具が好きな人たちが増えてくれると楽しいですね。」と話すPunさんの表情を見て、私は今後も時々石硤尾に足を運び、TOOLSSの変化するところと変化しないところを見続けていきたいと思いました。

【店舗情報】
TOOLSS
石硤尾偉智街38號福田大廈地舖
Fook Tin Building, Shop 2 G/F, 38 Wai Lun St, Shek Kip Mei
営業時間11:00-21:00(月曜定休日)

【雲呑麺】コクヨ香港支店勤務のアラフォー日本人男性。以前は好きなローカル料理を聞かれると、迷わず雲呑麺と答えていた。駐在歴4年で広東料理の奥深さを知るにつれ、「好きなローカル料理は?」が、今となっては最も答えに困る質問となっている。雲呑麺
コクヨ香港支店勤務のアラフォー日本人男性。以前は好きなローカル料理を聞かれると、迷わず雲呑麺と答えていた。駐在歴4年で広東料理の奥深さを知るにつれ、「好きなローカル料理は?」が、今となっては最も答えに困る質問となっている。

《雲吞麺》

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