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「アワードそのものも境界線を越え、新たなフェーズへ」コクヨデザインアワード2018

 2019年1月18日、「コクヨデザインアワード2018」の表彰式&審査員トークショーがスパイラルホールで開催されました。世界46カ国から集まった応募作品1,289点から、グランプリ1点と優秀賞3点が決定しました。

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「コクヨデザインアワード2018」表彰式のようす
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  • 「コクヨデザインアワード2018」会場エントランス
  • 「コクヨデザインアワード2018」グランプリに授与されたトロフィー
  • 「コクヨデザインアワード2018」オーディエンス賞の投票ボックス
  • 「コクヨデザインアワード2018」グランプリを受賞した山崎タクマ氏
  • 「コクヨデザインアワード2018」表彰式冒頭で挨拶するコクヨ会長・黒田章裕氏
木田:次は優秀賞に目を向けてみましょうか。「スマートなダブルクリップ」は、最後までグランプリとの2トップでしたね。

「スマートな」の作品名に込めた意図



川村:アイデアのジャンプがすごくあるグランプリに対して、この作品は日常の中にあって、使用シーンもわかりやすい。非常にクレバーなコンセプトで、みんながちょっと感じている煩わしさを美しく解決しています。商品化が見えるし、「ダブルクリップを買うなら、迷わずこれ」という人も多くて、我々にとっても良い議論ができました。

「テーマとのブリッジ、アイデアのジャンプ、デザインとしてのクラフト、自分が欲しいか」を評価軸にしているという川村氏

佐藤:アイデアが持っている「スイートスポット」ってあるんですよね、そこを絶対にはみ出さない、コントロールはすごいなと。ただ、唯一ひっかかったのはネーミングですかね。

受賞者・豊福:携帯電話がスマートフォンへ変わっていき、そのうち「スマートフォン」という名前もなくなって、電話として一般的になるのかなと思っています。ですから「スマートなダブルクリップ」が2年後、3年後、一般的に「ダブルクリップ」と呼ばれる文具になって欲しいと思い、「スマート」にあやかりました。

ユニバーサルな性質にキュンとした



木田:「Palletballet」は、渡邉さんがちらっと見てすぐに「素敵だわ」とおっしゃっていましたね。

渡邉:これがどういうふうに使われるかは二の次で、一次審査の写真だけで形も色も本当に良いなと思いました。完成度がすごく高い。

木田:デザインしたSochの皆さんは、審査員に聞きたいことはありますか。

受賞者・Soch:これはインドの伝統工芸から着想を得てつくった作品です。これが日本の消費者の方とどのように関わっていけるか、審査員の皆さんの考えを聞きたいです。

「一目惚れのようにきゅんとしました」と第一印象を語る渡邉氏

鈴木:かわいらしい不思議な形の入れ物から絵の具が飛び出して、自分が意図して描くのではない、自然のなりゆきに任せる制作プロセス。確定要素の多い現代日本にいる我々が、自分が意図せずに生み出される未知のものを潜在的に求めているとしたら、とても面白い出会いだなって思います。

佐藤:これを見た瞬間「コクヨデザインアワードは国際コンペになったな」と初めて感じました。これまでも海外からの応募はありましたが、日本の若手デザイナーと比べるとどちらかと言うと荒削りなところが目立って、アイデアが最終形まで昇華されないことも多かったように思います。でも、この作品を目にした今、これからは日本の若手デザイナーもうかうかしていられないな、と。

木田:コクヨデザインアワードにとっても境界線を越えるきっかけになった作品ですね。

ノートメーカーに“ドはまり”



木田:もう1つの優秀賞「白と黒で書くノート」は、最終審査で「光」が話題になりました。

佐藤:普通、絵を書くときは影を描きますが、光も影も描けるのがすごくいいなって。今回は罫線入りのノートに仕上げていますが、罫線のないスケッチブックもあったらいいなと思いました。

黒田:グレーだからこその理由がすごく伝わってきました。真っ黒だったらまったく異なるものです。おそらく筆記具メーカーなら色をたくさん使いたいでしょうから、他のパステルカラーも映える黒を用いがちですが、我々のように紙にこだわっているノートメーカーにとっては、立ち戻って考えるべきポイントです。“ドはまり”したなと思っています。

「ノートメーカーとしての原点に立ち戻らせてくれた作品」と語る黒田氏

受賞者・中田:プレゼンテーションは、機能的な価値を軸に構成しようとは思っていましたが、どう落とし込むかにすごく悩みました。表紙に「Campus」という文字を描いてしまうと、ブランドの強さに印象を引っ張られてしまうなと思って。

植原:個人的には、そこはこだわりすぎずに、素直に「Campus」で良かったと思います。そのほうがかえって中身のアイデアに目が行くので。むしろ表紙になにか描いてあると、その意味の解釈も含めて、評価せざるをえないので。

それぞれの境界を越えて



 最後に、審査員ひとりひとりから総括がありました。

植原:境界を越えたら、次は「自由の領域」ですよね。おそらく来年の審査は相当大変な議論になるのではないでしょうか(笑)。僕らの仕事自体も境界を越え始めていて、いろんな人とつながったり、いろんな方法論を生み出したりしています。これから先、すごく楽しい時代なんじゃないかと思っています。

「審査員である我々も学びの多い時代」だと語る植原氏

川村:プレゼンテーションもプロトタイプもどんどん質が上がっていて、その評価自体ももちろんですが、その裏に隠された意図や、伝えきれなかった部分まで評価できるような目を、審査員である我々も持っていないといけないなと思います。そうでないと、本来とても良い作品を落選させてしまい、良いアイデアを失ってしまうかもしれない。これは、自分への戒めです。

鈴木:豊福さんの受賞コメントがとても印象に残っています。デザインというのは「みんなが欲しいもの」をつくるのではなく、「こんな考えもあるよね」「こんなものが欲しかった」と身近な人同士で共感し合えてこその魅力があります。そういうプライベートなデザインが、パブリックに出て、今度はメディアを通して、再び身近な人が驚くわけです。「やっぱり自分たちの目は間違っていなかった」と。身近な人が少ないほど、マニアックなデザインになりがちですが、それでも評価されるということは、それだけ社会的にも大きな意義が見出せる素晴らしいデザインということだと思います。

 そして山崎さんが「モノづくりはしたくなかった」とおっしゃっていたのも印象的でした。モノをつくって定着させることには限界があるという言葉が聞けて、僕自身が励まされました。形あるモノをつくるということは、つまりその周りのコトもつくるという意味でもあり、とても難しいことだなと改めて感じました。

佐藤:今年度は、とにかくレベルが高かったですね。ただ傾向として、ユニットでの出品が少なくなっていたり、ファイナリストの10組中4組を海外勢が占めるなど、開催16回目にして、新たな印象を持ちました。

 デザインコンペって結局、勝ったか負けたかはどうでも良いのです。むしろ今隣に座っている受賞者同士がつながりを持つことが大事な財産になります。今後も交流が続けば、アワード受賞そのものよりも意味を持つものになると感じています。

「審査結果よりも今隣に座っている人との繋がりがアワードの財産になる」と話す佐藤氏

渡邉:今年は一気にレベルが上がったように思うし、全部が面白かった。学生時代から応募している人もいらっしゃって、皆さんそうして成長していっているんだなと思いました。もし予選通過が叶わなかった方々のプレゼンテーションも聞けたら、もっと良いものがあったかもしれない。それでもそれぞれの審査で選ぶしかないのが私たちの立場の難しさです。

黒田:今は商品化のことで頭がいっぱいです(笑)。今年はこのコクヨデザインアワード自体が境界線を越え、グローバルなコンペとして前進できたと感じました。本当にこれは皆様のおかげです。

 我々は商品化を目標とすることで真剣に取り組みますし、皆さんも商品化を期待してデザインしてくださっているのがこのコクヨデザインアワードです。コクヨ一社に限らず、もっと多くの方々にとってのムーブメントになるまで続けていきたいと思っていますので、引き続き応援いただければと思います。2019年もぜひよろしくお願いいたします。

このアワードを「デザイン運動」へと広げたい



 90分間のトークショーはあっという間。受賞者と審査員が質問し合ったり、また来場者からも発言があったりと、それぞれの立場を越えた、リアルなやり取りが多く行われ、これがコクヨデザインアワードの醍醐味だと感じました。

 司会の木田氏が「賞は毎年続けていくことに意味があるし、コクヨデザインアワードも毎年進化してきています。こうなると1つの『デザイン運動』になってきているんじゃないかと思います。それは、誰かひとりが先陣を切り、周囲がその人についていくのではなく、来場者、受賞者、審査員、皆さんの『呼吸の試合』によって動き続けるものです。コクヨデザインアワードがそういう賞であることを、ここにいらっしゃる皆さんに感じていただきたい」と話したことは、まさにこのアワードをよく表しています。

 この日から、コクヨ社内では受賞作品の商品化に向けた取組みが、審査員による2019年の新たなテーマ設定が、そしてデザイナーの皆さんによる新たなデザインがすでに始まっています。
《柏木由美子》

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