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【我喜愛的文具店(私の好きな文具店)香港編9】香港最大の文具店

 香港で欲しい文具が見つからず困ったらここに行くべし、と私が迷わずお勧めする香港最大の文具店「中南広場」は彌敦道の中ほど、油麻地にあります。今回は、創業当初から40年以上にわたりこのお店を率いてきた施さんに、成長の秘訣やお店の今後についてお話を伺いました。

文房具
40年以上の間店を切り盛りしてきた施さん(右)。店舗1階のノート・ファイル売り場にて。
  • 40年以上の間店を切り盛りしてきた施さん(右)。店舗1階のノート・ファイル売り場にて。
  • 九龍の目抜き通り彌敦道は油麻地にある「文儀専門店」が中南広場の看板。観光ついでに寄るにも便利な立地。
  • 店舗正面から。上のフロアはそれぞれ、G/F(地上階)の3倍のサイズ。総床面積10,000平方フィート(約920平米)、香港最大の文具店です。
  • 店舗入り口を入ってすぐのエスカレータ前にある案内板。それぞれのフロアが独立した専門店レベルの品ぞろえです。
  • まずはG/F、筆記具売り場。日本メーカーの海外仕様モデルなど珍しいものもたくさんあるようです。
  • 高級筆記具もずらりと品揃え(写真は一部)。このコーナーには専門担当者がおり、説明をしてくれます。これだけ多いと、他では見つからない掘り出し物もありそうですね。
  • 1階のレジ。このお店は各階にレジがあります。広い店ですが、小さな文具店と同じように、レジ周りには商品がギッシリ。
  • 2階のクラフト用品コーナーには、日本の折り紙もたくさん売っています。
 九龍半島を南北に貫く目抜き通りの彌敦道(Nathan Road)。1日中車と人でごった返すにぎやかな通りにひときわ目立つ黄緑色の看板。

九龍の目抜き通り彌敦道は油麻地にある「文儀専門店」が中南広場の看板。観光ついでに寄るにも便利な立地。

 香港で欲しい文具が見つからず困ったらここに行くべし、と私が迷わずお勧めする香港最大の文具店「中南広場」は彌敦道の中ほど、油麻地にあります。今回は、創業当初から40年以上にわたりこのお店を率いてきた施さんに、成長の秘訣やお店の今後についてお話を伺いました。

香港の店舗事情



 これまで何度かご紹介した通り、土地が狭く家賃の高い香港で大きな店舗を構えるのは至難の業です。そのため、香港の文具店は日本に比べてとても小さく、店内は床から壁から天井まで商品が所狭しと並んでいるのが通常です。ましてや複数フロアを持つお店は片手で数えるほどですから、こんな街中駅近に4フロアもの店舗を持っている中南広場は他を圧倒する特異な存在と言えます。

店舗入り口を入ってすぐのエスカレータ前にある案内板。それぞれのフロアが独立した専門店レベルの品ぞろえです。

 その店内はというと、さすがに小さな文具店よりは幾分余裕があるものの、それでも床も壁も天井も文具がギッシリ。筆記具の地上階から始まり、メインフロアの1階、クラフト・手芸の2階と美術用品の3階。専門性の高いそれぞれのフロアには、老若男女、芸術系の学生や建築関係とみられる専門職の人たちまで、あらゆるお客がやってきます。

巨大文具店ができた理由



 ところで、この巨大な文具店はどのようにしてできたのでしょうか。そして、なぜ中南広場だけがこのように発展することができたのでしょうか。

店舗正面から。上のフロアはそれぞれ、G/F(地上階)の3倍のサイズ。総床面積10,000平方フィート(約920平米)、香港最大の文具店です。

 その歴史は、1973年に遡ります。当時、今の店舗がある油麻地から少し北に行った繁華街の旺角は西洋菜街に、三育という名前の有名な書店がありました。この書店を現在の中南広場のオーナー(前述の施さんの親戚)が買い取り、ほどなく文具店へと事業を転換します。当時のお店は約370m2と、現在の半分弱の広さではあるものの、品揃えで他店を圧倒するには十分な広さでした。生まれながらにして香港最大の文具店の一つであった中南広場はすぐに繁盛し、1990年には同じ西洋菜街で数軒隣の2階建て物件を購入し、移転します。

 施さんによると、これが成功の転機でした。大きな自社物件を手に入れ、スペースと家賃のプレッシャーから解放された中南広場は、お客の求める品ぞろえを追求することができ、誰もが知る存在となっていったのです。

「レストランでもそうでしょう。日本は専門店、香港は茶餐廳。」と施さんは言います。茶餐廳(チャーチャンティン)とは、喫茶店・定食屋・ファミレスを混ぜたような、香港独特の飲食店。中華・洋食・デザートなどジャンルを問わず、すごい数のメニューがあるのが特徴です。施さんの言葉の意図はつまり、「様々な層のお客がおり、それぞれが色々な文具(時には文具以外も)を探しに来た。それに応じて商品を増やしていったら今の中南が出来上がった。」ということでした。もちろん、何でもかんでもやみくもに仕入れたわけではなく、そこには施さんの確かな目利きがあったはずです。なんと、現在の店舗に移る9年前まで、販売する全ての商品の決定は施さんが行っていたのですから。

 中南広場が茶餐廳であるならば、施さんはまさにその多種多様なメニューを作り出すシェフといったところでしょうか。「今はカッターナイフなどの工具の品ぞろえを充実させようと研究してるよ」と、シェフの新メニュー開発の意欲は40年以上たった今でも衰え知らずのようです。

ピンチはチャンス?逆境の中の驚くべき一手



 そんな圧倒的な存在の中南広場を持ってしても、将来は安泰ではないと施さんは言います。文具の消費量の減少や、中国のTaobaoに代表されるオンラインストアへの消費者の移動により、店舗に文具を買いに来るお客は減っており、商売は以前ほど順調ではありません。しかし、この業界全体にとっての逆境の中で4年前に中南が打ったのは、驚きの一手でした。40年間1店舗のみで運営してきた老舗が、香港島の炮台山に2店舗目を出店したのです。小さな文具店がどんどん店を畳んでいることは、中南にとっては機会でもあるというのが施さんの考え。文具業界の苦しい状況が続いているからこそ、今後さらに出店を行う可能性はあるそうです。

 最後に、「やるだけやってダメだったら、近い将来この本店を閉めることも考えておられますか?」と私が質問してみたところ、「本当は茶葉の商売をした方が儲かるからそうしたいけどね」と施さんは冗談交じりに言いました。しかし続けて、「自分たちには文具屋以上に得意な商売が無いから、当面は文具店をするしかないね」と答えてくれました。年々文具店が減り、文具難民にとってこのお店の存在はますます重要になっています。私自身にとっても、「困ったら中南」が当分の間は通用しそうだとホッとしたのでした。


【店舗情報】
中南広場
・油麻地旗艦店
 九龍油麻地彌敦道503號地下至3樓(MTR油麻地駅C出口から徒歩1分)
 G/F-3/F, 503 Nathan Road, Yau Ma Tei, Kowloon
・炮台山店
 香港北角英皇道135號民衆大厦M樓全層(MTR炮台山駅A出口正面)
 M Floor, United Building, 135 Kings Road, North Point, Hong Kong

【雲呑麺】コクヨ香港支店勤務のアラフォー日本人男性。以前は好きなローカル料理を聞かれると、迷わず雲呑麺と答えていた。駐在歴4年で広東料理の奥深さを知るにつれ、「好きなローカル料理は?」が、今となっては最も答えに困る質問となっている。雲呑麺
コクヨ香港支店勤務のアラフォー日本人男性。以前は好きなローカル料理を聞かれると、迷わず雲呑麺と答えていた。駐在歴4年で広東料理の奥深さを知るにつれ、「好きなローカル料理は?」が、今となっては最も答えに困る質問となっている。

《雲吞麺》

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