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【開発秘話】表紙には6種の動物たち…60周年デザインに込めた「野帳」への愛

 60周年を記念して、当時の復刻版を含む6種類の特別デザイン「60th記念測量野帳」と関連商品が発売されました。企画を担当したステーショナリー事業本部の小笹睦美さんに、こだわりや開発での苦労についてお話を伺いました。

文房具
「60th記念野帳」の商品開発を担当したステーショナリー事業本部の小笹睦美さん
  • 「60th記念野帳」の商品開発を担当したステーショナリー事業本部の小笹睦美さん
  • 顔の角度や立ち姿、野帳の持ち方にもこだわった「60th記念測量野帳」
  • 使用素材の変更やページ数の増減はあれど、60年間ほぼ変わらぬデザインの測量野帳。(右)現行品
  • (右)60周年を記念して、当時の仕様を参考に復刻した「60th記念測量野帳」
  • 60周年を記念して、当時の復刻版を含む6種類の特別デザイン「60th記念測量野帳」と関連商品が発売された
  • 60周年を記念して、当時の復刻版を含む6種類の特別デザイン「60th記念測量野帳」と関連商品が発売された
  • 60周年を記念して、当時の復刻版を含む6種類の特別デザイン「60th記念測量野帳」と関連商品が発売された
  • 「60th記念測量野帳」のスケッチブックには、方眼に発掘のメモをとる考古学者のウォンバットのイラスト
 1959年に発売され、土木や建築の仕事現場で活躍する測量野帳。その使いやすいサイズや機能性の高さから、文具女子たちを中心に一般でも人気が高まり、60年間に渡って支持されているロングセラー商品です。

 60周年を記念して、当時の復刻版を含む6種類の「60th記念測量野帳」と関連商品が発売されました。全国販売は2019年7月8日からですが、一部店舗では先行発売されているとのこと。特別デザインをあしらった「60th記念測量野帳」の企画を担当したステーショナリー事業本部の小笹睦美さんに、こだわりや開発での苦労についてお話を伺いました。

1年がかりで誕生した6種の「60th記念野帳」

愛され続ける「測量野帳の魅力」を紐解くところからスタート



--60周年おめでとうございます。6種類の特別デザインの野帳が発売されました。どんな経緯で、またどんな思いで商品の開発を手掛けられたのでしょうか。

 2018年の夏、測量野帳の発売から60年の節目を迎えるにあたって、記念になる商品を作ろうというプロジェクトが発足しました。私が担当する商品企画やデザインのほか、販売戦略、広報ブランディングなど、さまざまな視点を持ったメンバーが集まり、なぜ60年もの長きにわたって測量野帳が支持をされているのか、あらためてその魅力を紐解くことからスタートしました。コクヨで働く私たちにとっても、野帳は魅力的で特別な商品です。自分たちがユーザーとして感じていることも含め、その魅力をたくさんの人に伝えたいという熱い思いを各々が持ちながら、60周年にふさわしい野帳のアイデアを出し合い、検討を重ねました。

--今なお野帳が支持される理由を模索するなかで再認識した、野帳の魅力とはどのようなものだったのでしょうか。

 かつても今も、やはり1番の魅力は「携帯性」だというのがメンバーの総意です。建設現場の作業着のポケットにすっぽりと入るスリムでコンパクトな大きさと、立ったまま筆記できる硬い表紙が野帳の大きな特長。少しくらい濡れても大丈夫という防水性はもちろん、表紙の素材もタフなので、多少のことでは折れ曲がることはありません。

使用素材の変更やページ数の増減はあれど、60年間ほぼ変わらぬデザインの測量野帳

 コンパクトさゆえ保管するときに場所を取らない点も、リピーターが多い大きな理由だと思います。日記やスクラップブックとして野帳を使うユーザーも多いのですが、束にしてコレクションしておける気持ちよさもあると思うんです。この形、この厚み、このサイズだからこそ、さまざまなシーンで使いやすいよねという結論に至りました。

表紙には6種類の動物!遊び心あふれるイラストに注目



--測量野帳といえばポケットサイズ。魅力の原点に立ち返ったのですね。ところで、今回の特別デザインには6種の動物が登場していますね。

 はい。できる限り「野帳らしさ」を残しながら、特別感を演出できるデザインを考えたときに、表紙に箔押しのイラストを配したシンプルなものに行き着きました。

 イラストを検討する中で「屋外でも使うものだから、野外で行動する“動物”が良いよね」「ポケットサイズの特長を伝えたいから、ポケットを持つ動物をモチーフにしたら?」というアイデアが出ました。測量現場で高さを測る用途で使われる「レベルブック」の表紙には、高い木での高所作業が得意な現場監督・コアラ。細かな方眼の「スケッチブック」には、泥だらけの発掘現場でさっとメモする考古学者のウォンバット。この仕様にはこの動物といったストーリーや表紙としての見栄えも考えながら、有袋類を中心にポケットを持つ動物たち、具体的にはコアラ、ウォンバット、ハリモグラ、カンガルー、フクロモモンガ、フクロアリクイの6種類に絞り込みました

顔の角度や立ち姿、野帳の持ち方にもこだわりが!

 イラストレーターに描いてもらった元絵をベースに、それぞれの動物イメージを重ねています。ちょっとした顔の角度や立ち姿、野帳の持ち方や使い方にもこだわっているので、ぜひ手に取って表紙のイラスト部分をじっくり見てほしいですね。

歴史を感じる、昔ながらの3種の仕様を復刻



--現在販売中のレベルブック、トランシットブック、スケッチブックに加えて、かつて販売されていたというオフセットブック、エブリブックを復刻されましたね。新商品を開発するのとは違った苦労やこだわりがあったと思います。

 そうですね。1959年発売当初のラインナップには「レベルブック」「トランシットブック」「スケッチブック」「オフセットブック」の4種類があり、そのうち3種類がほぼ変わらない仕様で現在も販売されています。表紙に書かれている「LEVEL」「TRANSIT」というのは測量方法の名称で、中紙はそれぞれの測量方法に適した罫線になっています。

 測量野帳のラインナップの中で唯一縦方向に開くタイプの「オフセットブック」は、2002年に廃番となったものです。17年前までは販売していたので、すぐに作り直せると思ったら、縦開きの仕様を作る工場の機械がもうなくなっていて…。商品そのものを生産する工場や設備にも変遷があるんだなと、あらためて野帳の歴史を感じました。当然、60年前に第1号の測量野帳を開発した担当者は退職しているので、当時の開発者の意図を読み解ききれないという大きな苦労もありました。どの程度忠実に復刻するか悩みましたが、オフセットブックの中紙は、複雑な測量に適した当時のオフセット罫から、縦向きにも横向きにも使いやすいようにと方眼罫に変更して、製本仕様のみを復刻しました。

パソコンの手前に横に開いてメモすることも想定し、中紙は方眼で復刻した「オフセットブック」

 「エブリブック」は1992~2002年の10年間だけ発売されていたものです。罫線のない白無地なので、真っ白なページに絵を描いたり、カスタマイズしたり、使い方を限定せずにあらゆる用途で使ってほしいと思っています。

 そして、今回新たに発売となるのが「ノートブック」です。考えてみたら、測量野帳には一般的なノートやメモ帳のような横罫がなかったことに気づき、かねてからユーザーからの要望があったこともあり、発売に至りました。通常のノートの罫線幅はJIS規格で決まっているのですが、手元が不安定な状態で持って書くときに、細すぎても太すぎても使いづらい…と、実際にいろいろな人に試してもらった結果、野帳のサイズに適した「5.5cm」という罫線幅に落ち着きました。

文房具愛好家たちが再発掘した、専門職向けアイテムの魅力



--野帳を使う側のニーズをとらえた商品づくりへのこだわり、そして開発者の方々の野帳への愛情は、60年前も今も変わらずに受け継がれているのですね。あらためてお聞きしますが、野帳がここまでの超ロングセラーとなった理由をどのようにお考えでしょうか。

 もともと、野帳は専門職のための仕事のツールでした。1949年に測量法が制定されたのをきっかけに、レベル測量やトランシット測量といった測量方法の記入様式に添って、距離や角度などの測量データを書き留めるものが必要になったのが誕生のきっかけです。

 そのため、作業服のポケットに筆記用具と紙を入れて、立ったまま書くことが多い場面を想定して作られましたが、当初の特長がそのまま、営業マンが出先で立ったままメモしたり、カフェなどの狭いテーブルでも書きやすかったり、スーツのポケットに入れてもかさばらないという理由で、ニーズを満たしたようです。

 これまで、時代に応じて材料の見直しなどはありましたが、基本的な姿や中身の仕様はほぼ変わっていません。私たちが意図して一般向けに打ち出したのではなく、あくまでもユーザーが見出してくれたもの。測量士という専門職のためのツールを、文房具愛好家の方々が再発掘してくれたというのが正しいですね。知る人ぞ知るマニアックなアイテムだった野帳の魅力を見出して、一般化してくれたんです。1冊数百円という心置きなく使える価格も愛される理由のひとつのように思います。

待望の「測量野帳用クリアカバー」も新発売



--今回、今までになかった野帳用のカバーも発売になりました。どういったニーズがあったのでしょうか。

 「強度アップや防水、保護のためのカバーがほしい」といったユーザーからの要望がこれまでも多くありました。とは言え、カバーいらずの頑丈さが持ち味の商品ということもあり、カバーの制作に関しては社内では都度議論が繰り返されていました。

カバー自体はシンプルの極み。カスタマイズを楽しんでほしい

 今回、満を持して販売に至った理由は、SNSなどで自作のカバーを作り、大切に使ってくださっている野帳ファンの方がたくさんいらっしゃったことです。ファンの方の野帳愛が、カバーを開発する後押しになりました。

 実際、野帳を毎年手帳として使う方もいて、そうなると1年以上長く使うのでカバーが重宝します。今回のような限定デザインの野帳の表紙をきれいな状態で使うこともできます。

 ただ、カバーをすることで厚みが出てしまっては本末転倒です。あくまでも、野帳のミニマムでソリッドな雰囲気、携帯性に優れているという魅力を失わないように、もっともシンプルなカバーを用意することにしました。クリアタイプなので、好きな色や柄のペーパーを入れて着せ替えすることもできます。また、内側の折り返し部分には名刺やカード、チケットなどをさっと挟んでおくこともできます。

--今後、測量野帳の未来はどのように発展していくのでしょうか。

 発売60周年を機に、これまであまり開発の手をつけてこなかった周辺グッズの展開を予定しています。まだアイデア段階ではありますが、野帳をより便利にお使いいただけるグッズを考えているので、楽しみにしていてください。

 また、訪日客の皆さんにじわじわ人気が出てきていることもあって、海外にもこの魅力を発信したいという野望もあります。いつも肌身離さず持ち運びできて、ずっと保管しておける測量野帳。仕事や趣味の垣根を超えて、外での新しい経験を書き留める。自分のフィールドを広げていくためのツールとして、さらに多くの方に野帳を活用していただきたいです。

--“測量野帳はあなたのフィールドを広げる”。ワクワクするキャッチフレーズですね。本日はありがとうございました。

 メモ、日記、スケッチブックにお小遣い帳やスクラップブック…。100人いたら100通りの使い方があるという測量野帳。昭和に生まれ、平成で人気に火が付き、令和にはますます便利に発展していくであろう文房具界の逸品です。新時代が幕を開けた今こそ、自分流にカスタマイズした野帳を片手に新しいフィールドを広げてみてはいかがでしょうか。
《吉野清美》

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