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「男性の育休」のリアル~その3「残されたメンバーの闘い」

 ハウス食品株式会社に勤務する豊田陽介さんは、第3子の誕生をきっかけに1年間の育休に踏み切り、主夫として家族とじっくり向き合った。豊田さん自身と家族、職場のメンバーが過ごした1年間の軌跡を4回シリーズでお届け。

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「男性の育休」のリアル~その3「残されたメンバーの闘い」
  • 「男性の育休」のリアル~その3「残されたメンバーの闘い」
  • 黒田英幸さん
  • 左:黒田英幸さん、右:豊田陽介さん
 ハウス食品株式会社に勤務する豊田陽介さんは、第3子の誕生をきっかけに1年間の育休に踏み切り、主夫として家族とじっくり向き合った。豊田さん自身と家族、職場のメンバーが過ごした1年間の軌跡を4回シリーズでお届け。

 第三回は、育休中の豊田さんの仕事を引き継いだメンバーたちの苦闘とミッション実現までのプロセスに迫っていこう。

走り始めたプロジェクトを抜けるプレッシャーはひとしお



 豊田さんが上司の黒田英幸さんに育休を申し出たのは2017年10月。折しも豊田さんが所属する新領域開発部1グループでは、2018年秋に阪急うめだ本店にてオープン予定であるカレーパンの専門店「ハウス カレーパンノヒ」開店に向けて走り始めた時期だった。プロジェクトチームのメンバーは豊田さんも含めて3人で、豊田さんはチームマネージャーを務めていた。

「ハウス食品として百貨店での店舗をつくるのは初めてで、まったくノウハウがなく、ゼロからの立ち上げでした。しかもメンバーは自分を含めて3人なので、僕が育休で1年間抜けたら2人になってしまうわけです。最終的には、会社だけが自分の人生ではない、ということで振り切るようにはしましたが、『メンバーに迷惑をかけてしまう』という申し訳なさはずっとつきまといました」

育休に先駆けてプロジェクトの進行リストをつくり、残るメンバーの負担を軽減



 豊田さんが葛藤を感じていた頃、黒田さんも大きな不安にさらされていた。

「豊田さんはチームマネージャーとして全業務の半分以上を手がけていたため、彼が1年間抜けたらどうなるのだろう、という不安はありました。とはいえ、育休の経験を今後の仕事に活かしてくれるだろう、という期待もあります。ですから、彼が不在の1年間はできる限り残ったメンバーで頑張ろう、と考えました」

 もう1名のチームメンバーも、豊田さんから育休取得の話を初めて聞いたときにはこんな思いを抱いたという。

「『さすが豊田さん! 誰も使っていない制度を率先して活用しようとしている!』とうれしい驚きを感じた一方で、チームはこれからどうなるんだろう? と心配になりました」

 幸い、プロジェクトの進行はメンバー間で逐一共有できていたので、豊田さんが不在になったからといって仕事がストップすることはない。豊田さんは自分の育休中もプロジェクトがスムーズに運ぶよう、ショップのオープンから逆算してつくった時期ごとのTODOリストを作成し、チームメンバーに引き継いだ。

「もちろんそのリストにも不足している部分はたくさんあったと思います。ですが、その時点でできる範囲で、プロジェクト進行の道筋をつけておき、少しでも2人の負担を減らせればと考えて作成しました」

黒田英幸さん

上司の指示を待たずイチから考えて行動するメンバーの不安は大きかった



 豊田さんが手がけていた業務をメンバーが引き継ぐ形で、2人体制がスタートした。ただ、豊田さんに比べて経験の少ないメンバーがすべての業務をいきなり肩代わりするのは難しく、黒田さんと分担して受け持つことになった。

 残された2名がそれぞれ違う業務を担うスタイルになると、一つ問題が出てきた。黒田さんが現場に出る機会が増えたため、メンバーに対してマネジメントする時間が減ってしまったのだ。そのうえ、ショップのオープンは2018年11月に設定されている。その3か月前ともなると時間外業務も増え、2人は心身共にかなりしんどい状態だったという。

若手メンバーの自立が追い風になり新規プロジェクトが無事に形になる



 ショップのオープンという一つのゴールに向けて1年間走り続ける中で、チーム力は確実に向上した。特に、「残ったメンバーの成長は著しかった」と黒田さんは話す。

「僕が細かく指示できる状態になかったため、彼女は自ら考えて行動するようになり、自然と自立していきました。例えばプロジェクトの商談に行くにあたっても、あらかじめ着地点を見出して作戦を練ったり、スケジュールを立てたりできるようになりました。一時は体調を崩して倒れるのではないかと心配しましたが、思った以上にしっかりやりきってくれました」

 こうして豊田さんが不在の1年間、2名は全力疾走し、2018年11月には予定通りにショップを始動させることができた。

育休で取り上げられるべきは残されたメンバー



 豊田さんの一件をきっかけに、黒田さんは職場のメンバーが育休を取得することについて改めて考えてみたという。

「男性が育休を活用して家族と過ごすのは素敵なことだと思いますし、豊田さんの今後が楽しみでもあります。ただ、これは女性が育休を取得する際も同じなのですが、残るメンバーへのサポートやフォローは課題になり得ると感じます。1人が抜けても仕事が回る体制をしっかりつくらないと、育休を検討している人が『育休で抜けると同僚や上司に迷惑をかけるのかな』と躊躇してしまう可能性もあるので」

 残されたもう1人である3年目のメンバーは、豊田さん不在の1年を振り返りながら、男性の育休について次のように話す。

 「多様な働き方が求められている今、女性も男性も育休を取得するのは健全なこと。特に男性の育休体験は、女性が育児や家事を行いながら働く大変さを男性に知ってもらうチャンスだと思います。ただ、率直な感想として、直属の上司が1年間不在だったことで業務上の負担は大きいと思ったのも事実です。男性だから、ということではなく、育休に対する支援がまだ不足している実情があるのではないでしょうか」

左:黒田英幸さん、右:豊田陽介さん

 育休制度を実際に利用した豊田さん自身も、「残されたメンバーに対する配慮が不可欠だ」と語る。つづきはこちら
《横堀夏代 WorMo'より》

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