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【道具としての野帳】モノの厚みや奥行きを考えるときは、 手で書くほうがしっくりくる 。-SNARK小阿瀬直さん-

 群馬県・高崎と東京・恵比寿に拠点を構え、建築設計からプロダクトデザインを扱う株式会社SNARK。オリジナル測量野帳や、野帳用ポケットの付いたユニフォームを制作するほどの測量野帳ヘビーユーザー、SNARK代表の小阿瀬 直(こあせすなお)さんインタビュー。

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株式会社SNARK代表の小阿瀬直さん。工学院大学建築学科を卒業後、大手設計会社を経て独立し、2008年に小阿瀬直建築設計事務所を設立。2016年より現・株式会社SNARKに
  • 株式会社SNARK代表の小阿瀬直さん。工学院大学建築学科を卒業後、大手設計会社を経て独立し、2008年に小阿瀬直建築設計事務所を設立。2016年より現・株式会社SNARKに
  • 建築デザイン現場に欠かせない道具「野帳」…SNARK小阿瀬直さんインタビュー
  • 株式会社SNARK代表の小阿瀬直さん。工学院大学建築学科を卒業後、大手設計会社を経て独立し、2008年に小阿瀬直建築設計事務所を設立。2016年より現・株式会社SNARKに
  • 高崎駅からほど近く、3階建ての事務所にはオフィスをはじめ、イベントや展示会など多目的に使えるミーティングスペース、カフェ&レコード店も併設
  • 建具の接合部分をスケッチしたもの。野帳の方眼マスは45度の角度を書くときにも便利だそう
  • SNARKの仕事場。クリエイティビティに溢れた建築デザインが生まれる場所
  • スケッチしたものに寸法を書き入れて、写真に撮ったものをそのまま担当者に送って指示を出すことも
  • スタッフがバンコクで泊まったホテルの部屋の間取りを書いたもの。詳細な書き込みにプロフェッショナル性を感じます!
 群馬県・高崎と東京・恵比寿に拠点を構え、建築設計からプロダクトデザインを扱う株式会社SNARK(スナーク)。代表の小阿瀬 直(こあせすなお)さんは、オリジナル測量野帳や、野帳用ポケットの付いたユニフォームを制作するほどの測量野帳ヘビーユーザーです。どのように測量野帳に出会い、活用しているのかお話を伺いました。

作業の邪魔をしないのが、野帳のいいところ



--建築や設計などの現場に携わる方にとって、測量野帳は欠かせないツールだといいます。小阿瀬さんはいつ測量野帳と出会ったのでしょうか。

 僕は群馬高専の土木工学科を卒業しているのですが、学校で測量技法について習う授業があり、そのときはじめて測量野帳の存在を知りました。大学を卒業後、設計事務所に勤めましたが、初めは特にこのノートを使おう! と決めていたわけではなく、その都度いろいろな種類のメモ帳を使っていました。測量野帳の実用性に改めて気付いたのは、独立して今の会社を立ち上げてからですね。立ち上げ当初は、設計だけでなく自分たちで家具を作ったり、ペンキ塗りをしたり、とにかく体を動かす仕事も多くて。ドリル片手に作業するときに、バッグを持つのは邪魔…となると、丈夫で軽くて、ポケットに入れられて、作業の邪魔をしないメモ帳…ということで、測量野帳にたどり着きました。

株式会社SNARK代表の小阿瀬 直さん。工学院大学建築学科を卒業後、大手設計会社を経て独立し、2008年に小阿瀬直建築設計事務所を設立。2016年より現・株式会社SNARKに株式会社SNARK代表の小阿瀬直さん。工学院大学建築学科を卒業後、大手設計会社を経て独立し、2008年に小阿瀬直建築設計事務所を設立。2016年より現・株式会社SNARKに

高崎駅からほど近く、3階建ての事務所にはオフィスをはじめ、イベントや展示会など多目的に使えるミーティングスペース、カフェ&レコード店も併設高崎駅からほど近く、3階建ての事務所にはオフィスをはじめ、イベントや展示会など多目的に使えるミーティングスペース、カフェ&レコード店も併設

SNARKの仕事場。クリエイティビティに溢れた建築デザインが生まれる場所SNARKの仕事場。クリエイティビティに溢れた建築デザインが生まれる場所


頭の中の設計イメージを、書き込みながら組み立てる



--建築士としての仕事に、どのように野帳を活用しているのでしょうか。

 建築パースのように、立体像を書いたところに寸法を書き込んだり、アイデアスケッチを書いたりすることがおもな使い方です。どうやって作るか頭の中で考えたイメージを、野帳に書き込むことで具体的な設計物として組み立てていきます。家具の脚の付き方、ネジをどうやって止めたら作りやすいか…。そういった細かい部分を正確にアウトプットするのに野帳は適していると思います。

 また、住宅を設計するうえで部屋の間取りを考えるときには、野帳の3ミリ方眼が欠かせません。住宅の基準になる寸法と野帳の方眼がちょうど1/100の縮尺になるので、1畳ぶんを3マス×6マスとして書くことができるのです。まず部屋の枠を書いて、グリッドのマス目を数えて書き込みながら、全体の間取りを組み立てていきます。

株式会社SNARK代表の小阿瀬直さん。工学院大学建築学科を卒業後、大手建設会社を経て独立し、2008年に小阿瀬直建築設計事務所を設立。2016年より現・株式会社SNARKに
 プランターや家具など小さなプロダクトのデザインから、家や集合住宅の設計まで、小さなものでも、大きなものでも、スケールを変えて自在に設計できるのが野帳の大きな魅力です。

タブレットではなく、手で書いたほうがしっくりくる



--約90センチの畳の長さを、9ミリ(方眼3マス)の縮尺で書くことができるということですね。さすが、建築デザインならではの使い方です。

 文字情報だったら、手書きよりもテキストデータでコピー&ペーストして、そのままメールで送れるほうが断然早いですよね。ただ、絵はそうじゃないと思うんです。

 最近はタブレットなどを使う人もいると思いますが、物の厚みや奥行きを考えるときに、手で書いたほうがしっくりくるというのが僕の感想です。たとえば、ネジをどう取り付けるか考えるとき、パーツとパーツがぶつかっているところの“取り合い”をうまくやるときれいに見えるんです。ただ、薄いものでも絶対に厚みはある。その厚みをどう処理するか考えるときに、手書きのほうが見落としがないんです。実際に、1分の1の実寸で書くこともできるので、この厚みがあるからうまくつかない、というのがスケッチ上でわかるようになります。

建具の接合部分をスケッチしたもの。野帳の方眼マスは45度の角度を書くときにも便利だそう建具の接合部分をスケッチしたもの。野帳の方眼マスは45度の角度を書くときにも便利だそう

スケッチしたものに寸法を書き入れて、写真に撮ったものをそのまま担当者に送って指示を出すこともスケッチしたものに寸法を書き入れて、写真に撮ったものをそのまま担当者に送って指示を出すことも

--スタッフのみなさんも野帳を愛用しているそうですね。クリエイティブなお仕事ならではの活用術があったら見せてください。

 こちらはあるスタッフの野帳です。海外で泊まったホテルの間取りを書き込んでいます。これは建築士ならではなんですが、スケール(縮尺)がわかっていると自分が体験した場所の大きさを自然と把握できるようになるんです。パッと見でも寸法がわかるようになるので、こんなふうに間取り図に落とし込むこともできる。スタッフの間でも、出先で「ここのトイレの広さを測ってこい」とか「鏡や棚のサイズ当ててみて」とか、寸法当てクイズで盛り上がれるくらい、スケールの感覚は身に付いています。

スタッフがバンコクで泊まったホテルの部屋の間取りを書いたもの。詳細な書き込みにプロフェッショナル性を感じます!スタッフがバンコクで泊まったホテルの部屋の間取りを書いたもの。詳細な書き込みにプロフェッショナル性を感じます!

--寸法当てクイズ! 建築士ならではの視点が新鮮です。日頃から野帳を愛用するなかで、どういった経緯でSNARKオリジナルの野帳を作ることになったのでしょうか。

 イラストレーターのジュン・オソンさんの自宅を設計した際に、完成後の内覧会をしたんです。そのときのお客様にお渡しする、ノベルティグッズとしてオリジナルデザインの野帳を作りました。はじめは銀の箔押しで作ったところ、評判がよかったので白も追加で作りました。

イラストレーター ジュン・オソンさんの描きおろし。背景には、小阿瀬さんが設計した自宅の外観が描かれているイラストレーター ジュン・オソンさんの描きおろし。背景には、小阿瀬さんが設計した自宅の外観が描かれている


クリエイターと野帳の構想を練るのも楽しい



--事務所のロゴマークから着想を得たイラストだそうですね。“獣のような手がハンマーを持っている”ロゴの由来は?

 会社を立ち上げるとき、社名やロゴなどをいろいろ考えているなかで目に留まったのがルイス・キャロルの「スナーク狩り」という物語でした。「スナーク」という架空のモンスターを狩りに行くストーリーなんですが、“頭の中で作り上げたもの、空想のものを作る”という僕たちが目指すものと重なると思って、この名前に決めました。ただ、物語の最後までスナークの正体はわからないので、羽毛の生えた“手だけ”が出ているロゴデザインなんです。ジュン・オソンさんには、手から連想するモンスターを書いてもらい、それが表紙のイラストになっています。

 みなさんに好評をいただき、スナークオリジナル野帳のストックはもうあとわずか数冊。今年また新たにオリジナル野帳を作りたいと思っています。クリエイターの方々の家や事務所の設計を担当することも多いので、ご縁があった方にデザインしてもらいたいなと思っています。アイデアを出し合いながら、一緒に作っていく工程も楽しいですね。

左は1876年に発行された「スナーク狩り」の初版本。「不思議の国のアリス」で有名なイギリスの作家ルイス・キャロルの短編詩で、和訳も発売されている左は1876年に発行された「スナーク狩り」の初版本。「不思議の国のアリス」で有名なイギリスの作家ルイス・キャロルの短編詩で、和訳も発売されている


モンスターがハンマーを握るロゴデザイン。「スナーク」という社名は、小阿瀬さんの「すなお」という名前と「アーキテクチャー(建築)」をかけた意味合いも
モンスターがハンマーを握るロゴデザイン。「スナーク」という社名は、小阿瀬さんの「すなお」という名前と「アーキテクチャー(建築)」をかけた意味合いも


唯一無二のオーダーメイド・野帳ポケットが付いたシャツ



--オリジナル測量野帳のほかにも、野帳が入るポケットが付いたチームユニフォーム「BELZIGER」を制作されたんですよね?

 群馬県出身で、現在ベルリンで活躍している日本人デザイナーのARAIさんがうちのオフィスで展示会をしたときに、僕が一目惚れしたシャツがあって。そのシャツのパターンをカスタムして、野帳が入るポケットを付けてもらいました。プルオーバーのオープンシャツで、お祭りで神輿を担ぐ衣装の「鯉口シャツ」からインスピレーションを得たデザインで、肩の切り返しがない、1枚の布で作られています。

--“野帳用のポケット”というと、まず胸ポケットを想像しますが、シャツの裾部分にポケットを付けたのにはどんな理由があったのでしょうか。

 元のシャツが、肩から胸にかけてのドレープを魅せるデザインでした。そのデザインを生かすためにも、胸ポケットではなく違う位置にポケットを付けたいというのがあり、シャツの裾にくる部分にポケットを付けました。ポケットは前と後ろの2か所についているので、片方には野帳を入れて、もう片方にはスマートフォンなどを入れることができます。胸ポケットだと、どうしてもかがんだときに落ちてしまったり、作業の邪魔になってしまうことも多いので、やはりこの位置がベストですね。

 僕は身長が184cmあるので、シャツのサイズ選びに苦労するんですが、これはジャスト丈で着られます。スタッフ含めひとりひとりの寸法を測って体型に沿ったものを作っているんです。パターンから縫製まで完全オーダーメイドなので時間はかかりますが、普段のワークウエアとしてデザイン、実用性ともに優れているシャツだと思います。

フランスの問屋から生地サンプルを取り寄せるなど、素材やボタンなどのディテールにもこだわった一着フランスの問屋から生地サンプルを取り寄せるなど、素材やボタンなどのディテールにもこだわった一着

シンプルながら機能的なデザイン。ポケットに野帳を入れたときに、“目立ち過ぎないこと”を重視しているシンプルながら機能的なデザイン。ポケットに野帳を入れたときに、“目立ち過ぎないこと”を重視している

野帳の上部分がちょっとだけのぞくのがポイント。サッと取り出せる、計算されたサイズ感野帳の上部分がちょっとだけのぞくのがポイント。サッと取り出せる、計算されたサイズ感

野帳用のポケット(後)後ろにもポケットがあります


野帳は、道具。モノとしての存在感はなくていい



--測量野帳は小阿瀬さんにとってどのような存在でしょうか。溢れる野帳愛を教えてください。

 仕事のメモを書いたりスケッチをしたり…ときには息子が落書きしたり(笑)。3か月に1冊くらいの感覚で野帳を使っています。野帳は、鉛筆やスケールと同じ、毎日使う大事な道具のひとつ軽くて薄くて、ラフに使える。いい意味で、丁寧に扱わなくてもOKなのがいいところなんだと思います。

 開いたときの綴じ部分まで方眼がとおっているので、見開きで使えるのも便利ですね。方眼のバラツキや線の太さのズレも一切ない、緻密な計算がされているという点には感嘆するばかりです。それに使い込んで背が剥がれてきても、決してバラバラにならないクオリティの高さ。紙の質感や古くなり方も好きで、捨てられないですね。古くなっても、本のようにいつまでもとっておきたいと思える存在です。

背が剥がれてボロボロになった野帳。小阿瀬さんのアイデアを支えてきた道具のひとつであることが伺える背が剥がれてボロボロになった野帳。小阿瀬さんのアイデアを支えてきた道具のひとつであることが伺える

小阿瀬さん、スタッフの方がこれまで使ってきた野帳アーカイブたち。「記録としてずっと残しておきたい」と野帳愛を語ってくれました小阿瀬さん、スタッフの方がこれまで使ってきた野帳アーカイブたち。「記録としてずっと残しておきたい」と野帳愛を語ってくれました

--ありがとうございました。

 “野帳はあくまでも道具”そう話す小阿瀬さん。建築の世界で第一線を走り続けるプロの仕事現場に欠かせない大切な存在だということがよくわかりました。「ずっととっておきたい」という思いに応える「ずっととっておける」クオリティの高さ。測量野帳の魅力をまたひとつ発見したインタビューでした。
《inspi編集部》

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