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能登の酒蔵・数馬嘉一郎さんの挑戦 【シリーズ】新しいページをひらく人たち(3)

新しいノートを開くときのドキドキする気持ちはいつだって変わりません。それはきっと、どんな挑戦も最初の一歩からはじまる、その高揚感に通じるから。挑戦する人たちはいつもワクワクする気持ちにさせてくれて、私たちの日常のちょっとした挑戦に勇気を与えてくれます。

ピックアップ
【能登の酒蔵 数馬酒造】 経営者の数馬嘉一郎さん
  • 【能登の酒蔵 数馬酒造】 経営者の数馬嘉一郎さん
  • 【能登の酒蔵 数馬酒造】 お米は契約栽培にすることで、お酒を売れば売るほど放棄耕作地が田んぼとして蘇ります。
  • 【能登の酒蔵 数馬酒造】 すべての工程を社員が行っています。
  • 【能登の酒蔵 数馬酒造】
  • 【能登の酒蔵 数馬酒造】能登で作ったお米を原料にしたお酒づくり
  • 【能登の酒蔵 数馬酒造】 最新の機械を導入していくことで、社員の負担を減らしているため、昔のように残業、寝泊まりはないという。
  • 【能登の酒蔵 数馬酒造】
  • 【能登の酒蔵 数馬酒造】 原料だけでなく、使用する木枠なども能登の材料を使っています。
【シリーズ】『新しいページをひらく人たち。』
 大きな変化が期待される2020年。この東京で、日本で、この世界に驚きと変化をもたらしてくれる人たちにインタビューします。新しい変化を起こす人たち、挑戦する人たちの話は、私たちの日常にもちょっとした勇気を与えてくれるに違いありません。今回は、能登の酒蔵を経営している数馬 嘉一郎さんにお話を伺いました。

 数馬酒造は、150年の歴史ある「竹葉(ちくは)」ブランドを擁する、石川県能登半島東部の宇出津(うしつ)町、自然豊かな奥能登と呼ばれる地域にある酒蔵。その大自然を活かして田んぼ作りから初めて、徹底的に能登という出自の地域にこだわった酒造りをしています。

 昨今、地域にこだわった酒造り自体は珍しくないとは思いますが、数馬酒造のユニークな点は、お米などの原材料へのこだわりに留まらず、一緒にお酒を造る社員、農家の方たち、その他地域の人たちや自然と共生していくことを目指しているところです。例えば、高齢者問題等で年々増加している放棄耕作地を解消するためにお米の契約栽培を行ってますが、開墾していくうちに、田んぼに向かないとみると、大豆や小麦を作る畑に転換して醤油づくりをはじめたり、麹室で使う道具の木材なども地産のものを使っていたりと、地域を活性化させる施策が随所に表れています。「お酒造り」に留まらず、能登の人たちと一緒に、地域の未来を育んでいく事業をされていることが随所から伝わってきます。

徹底した地域一体の取り組み。耕作放棄地がゼロになった地域も



-- 若くして酒蔵の経営をされてますが。

 そうですね、24歳で経営者になりましたので早かったです。もともと、夢は社長になることでしたが、何をするかは決めてませんでしたので、最初に就職した時も、30歳になったら起業しようと思って勤めていました。23歳の時、先輩に「7年も待つ理由あるの?」と何気に聞かれて、確かにそうだなと思いました。その時にタイミングもあって、実家に帰った時に「やるか?」と言われ、「やります!」と。(笑)24歳で初めて、今年で10年目になりました。

能登で作ったお米を原料にしたお酒づくり
能登で作ったお米を原料にしたお酒づくり

-- いろいろユニークな経営をされていますね。原料もお米づくりから始めているとお聞きしました。

 お米づくり自体は、農家さんにお任せして契約栽培をしています。全部うちが買い取るので、安定して生産して頂けます。能登には耕作放棄地が多くあるので、それを何とかしたかったんです。お酒を売れば売るほど、田んぼが蘇るようになって、いまでは120人以上の方が田んぼを貸してくれて、東京ドームの5個分まで広がってます。ある地域では耕作放棄地がゼロになりました。

-- 醤油づくりもされてますね。

 はい、廃校になった保育所を醤油蔵にして作っています。これには理由があって、水耕に適さない田んぼが出てきたので、小麦と大豆を生産してもらって醤油を作ることにしました。そうすることで、経営的にも安定し、天災や不作などのリスクを分散することができます。他にもワイナリーであった施設をリキュール蔵として活用していますが、これらは社員さんから出たアイデアです。そういう意見が出るようになったことも嬉しいですね。

杜氏が造るのではなく、社員が造るお酒で受賞多数



-- 季節雇用の杜氏制度を廃止されたとお聞きしましたが、狙いは何でしょうか。

 実は杜氏というのは歴史的に、農耕ができない時期の季節労働者なんです。僕も疑問をもたず、杜氏さんが造るのが当たり前と思っていたんですが、ある時、杜氏さんから他の酒蔵に行くということを伝えられました。その時に社員さんと話し合った結果、自分たちで造れないかということになりました。杜氏制時代では、お酒造りの方向性も自分たちでは決められなかったのですが、現在はみんなで話し合って決めてます。考えてみれば、企業としては当然のことかもしれません。いまでは、お酒造りをすべて社員さんがメインとなって行ってますので、責任感も持てるようになり、結果的に品質も向上して、新しいものがどんどん生まれて、表彰されることも増えてきました。

会社入口には社員のメッセージが。社員発案の地場名産のイカに合う『いか純米』がモチーフ。
会社入口には社員のメッセージが。社員発案の地場名産のイカに合う『いか純米』がモチーフ。

「美味しいお酒」と「良いお酒」の違い。六方良しの経営指針



-- 田んぼを蘇らせたり、廃校を再利用されたり、いろいろ新しいことに取り組まれていますね。

 うちの酒は「飲んでいただいて、おいしい」がゴールではないんです。それは「美味しいお酒」ではありますが、僕は「良いお酒」を造りたい。「おいしい」の先に、地球とか未来とかそういうものがちょっと良くなった方がいいじゃないですか。近江商人の三方良しに加えて、「社員よし」「地域よし」「未来よし」というのが、持続可能なモノづくりだと思っています。

原料だけでなく、使用する木枠や櫂などにもなども能登の材料を使っています。
原料だけでなく、使用する木枠や櫂などにもなども能登の材料を使っています。

数馬さんの経営者としての挑戦



-- 社員の方に任せているというお話が多いのですが、実践するのは難しいことではないですか?

 経営者の方には、自分で何でもできる人が多いので、そうすると「何でこんなこともできないのか?」って思うのかもしれませんが、幸いなことに僕は何もできないので「全部なるほど!」としか思わないです。冗談でなくレジひとつ打てませんから。(笑)「自分でやった方がよかった」とか「早かったとか」とかはなくて、「任せてよかった」しかない。めちゃめちゃ社員さんを信じてますし、それが経営者の資質としての自分の強みだと思います。

-- レジ打ちもできないというのは極端な話ですね(笑)。その経営観はどこから来たのでしょうか。

 最初に、経営するために何の知識が必要かを考えました。例えば事業運営に必要な知識としては、財務、マーケティング、それこそwebの知識とかいろいろありますよね。それを全部マスターしようと思ったら、寿命が先にくるんじゃないかと気づきました。(笑)そもそも一人でできる仕事じゃないから、任せようと。だから僕は経営しかしていません。社員さんにも自分の得意なことをメインに行ってください、と伝えています。

-- すでにいろいろ実現されていますが、今後、挑戦したいことはありますか?

 いまお酒を造る会社を経営していますが、将来は、どんな会社でも経営できる経営者になりたいと思います。少しおこがましい言い方になるかもしれませんが、地方には廃業される会社も多いです。もし、そういうところも経営できるようになれば、地域も助かるし、雇用も守れると思んです。そういうことを引き受けられる経営者になりたいと考えています。

社員が責任感を持ってつくることで、受賞も増えたという。
社員が責任感を持ってつくることで、受賞も増えたという。

--これから何かに挑戦しようとする人へ、メッセージをお願いできますか。

 1つは、行動の方が簡単ということでしょうか。何かやる前には、ほとんど起こらないようなことまで心配してしまうので、頭の中で考えることが一番怖いことだと思うんです。だから、動かない方が怖いです。例えば、会社休んで何もしなくなったら、業績が落ちて会社がつぶれちゃいます。

 実は行動ではなく、失敗が怖いのではないかと思いますが、「人生に失敗がなければ、人生を失敗する」※という言葉があります。行動よりも先に、失敗することを恐れてしまいがちですが、失敗と言われることがあったとしても、経験則でいうと必ず何とかなりますので、まず行動をしてみてください。
※「モタさん」の愛称で知られる精神科医の斎藤茂太氏の言葉。

-- 勇気の出ることばですね。本日はありがとうございました。

試飲に頼ってた仕上がりも最新の機械を導入して、社員の負担を減らしつつ品質を向上させている。
試飲に頼ってた仕上がりも最新の機械を導入して、社員の負担を減らしつつ品質を向上させている。


 常に戦略的な思考で論理的にお話をされていた数馬さん。しかしながら、ロジカルでありながらも、冷たい印象は全然なく、従業員や地域への愛情をナチュラルに感じて、とても心地よくお話を聞かせて頂きました。

 お気づき頂いたかわかりませんが、従業員の呼称は「社員さん」というのが印象的でした。これは、経営者と社員を上下関係でなく、立場や役割で捉えているからでしょう。「自分のやりたいことができるのが経営者の特権でもあると思うのですが?」という質問には、「そんなことしたら社員さんに申し訳ない。」と即答されました。「やりたいこと」でも「やるべきこと」でもなく、会社にとって良いことかを考えて「あるべきこと」を選択しているのだと数馬さんは言います。

 目標設定は面白くないのでやらないと型にはまらなない一面を見せたり、(経営以外のことは)レジも打てないと笑って話してくださいました。徹底的に経営を突き詰めようとされていて、自分の役割に真摯な若き経営者でした。ともすれば、すべて平均点を目指そうとする社会の中で、個性を大事にして、全員がベストを尽くす姿は清々しさを感じます。まさに清酒造りにふさわしい経営を実践されていました。

 おススメは看板商品の「能登純米」。能登の地に想いを馳せて一献いかがでしょうか。
《防災訓練生.S》

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